患者に薬を飲まない自由はないのか
精神科病院では、うつ病薬や睡眠薬など脳の中枢神経に作用する向精神薬が処方される。その副作用や依存で苦しむ人は多いが、患者自身へインフォームドコンセント(医療行為に関する十分な説明と患者の同意)はおろそかにされている。
精神科病院で手足や胴体を縛る身体拘束とほぼセットで患者に投与されるのが、向精神薬だ。病院が身体拘束を行う場合は家族の同意を得る必要がある。しかし、向精神薬はたとえ大量に投与する場合でも、本人や家族に同意を求めることすらない。「病院の秩序のため」「家族のため」と言われ、患者は薬を半ば強制的に投与される。
患者を過度に鎮静化して無抵抗にするという点で、向精神薬は身体拘束と同じだ。その意味で、向精神薬の投与は「化学的拘束」とも言われる。入院中、患者は看護師の前で薬を飲み、しっかり飲んでいるか確認される。口を開いて飲み込んでいるかまで見られることもある。
精神障害のある当事者と支援者で作る「YPS横浜ピアスタッフ協会」に所属する堀合研二郎さんは、「医療者側が薬物療法以外の選択肢を持っていないため、それに頼りがちになっている」と訴える。堀合さんは、20代のとき統合失調症と診断され、向精神薬の副作用に苦しんだ経験がある。
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