写真が語る「キエフの地下鉄駅」信じがたい光景 女性や子ども1万5000人が寝泊まりしている
キエフの地下鉄の駅奥深くまで最後の数メートルをエスカレーターで降りて行くと、普段は染み1つない清潔な構内には、散乱したマットレス、スーツケース、食べ物が入ったビニール袋が目に飛び込んでくる。上空の爆撃や砲撃から逃れるために200人ほどがそこに陣取っていたにもかかわらず、その空間は驚くほど静かで、ほとんど無音に近かった。
彼らは1枚のマットレスに3、4人で寝ている。子どもたちは、駅の床に敷かれた灰色の花崗岩製のスラブの上でおもちゃの車を押しながら、母親がスマートフォンの画面を延々とスクロールして戦争のニュースを探しているのを見ている。
1万5000人が地下鉄駅に避難
小さな手足が毛布からはみ出ている。だが、地上よりも駅構内のほうが明らかに暖かい。ボランティアらは、食料や生活必需品を運んできては出ていく。ある母親は、プライバシーを確保するためにテントを張った。
「居心地がいいとは言えないです」とウリヤナは打ち明ける。彼女は9歳で、母親と猫と一緒にドロホジチ駅での生活を始めて6日目になる。「でもこの状況だから、我慢するしかないです。外で危ない目に遭うよりは、ここにいるほうがいいから」
3月2日に同市の市長が発表したところによると、1万5000人もの人々(ほとんどが女性と子ども)が、ロシア軍が押し寄せている市内の厳しい状況から逃れるために、キエフの地下鉄に避難している。
そして、地下鉄だけが地下の避難場所ではない。例えば、キエフの第5産科病院の医師らは、女性らに安全な出産の場を提供するため、地下に部屋を設けている。同院のドミトロ・ゴブセーエフ院長によれば、これまでに5人の新生児が誕生したという。