ロシアのデフォルトは金融システムを揺るがすか 各国のロシアとの貿易、ロシア向け与信を分析

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しかしだからといって、SWIFT遮断が無意味なわけではない。周知のとおり、SWIFT遮断の決定は実施前からロシアルーブルの暴落を引き起こしており、もはや反転のメドは立たない。本来はロシアの中央銀行が外貨売り・ロシアルーブル買い介入で支えたいところだが、その原資である外貨準備も半分近くが凍結されて使用できない。ロシア中銀は決済(為替介入)ルートが使えないから、政策金利を一夜にして倍にするといった、痛みを伴う金利ルートで通貨防衛しようとしているのである。

ロシアに物資を輸出する国は暴落するロシアルーブルで売上金を受け取るはずがなく、ドルやユーロ、円などを要求するだろう。しかし、それも塞がれている。つまり、現時点でロシア企業との貿易取引が禁じられているわけではないが、SWIFT遮断によってロシアルーブルが暴落したことで、多くの企業がロシアとの貿易取引を忌避する状況になった。これがSWFIT遮断の現時点で発生している効果であり、「骨抜き」批判はまったく正しくない。

「ロシア抜きの世界」が意味するもの

BISデータも示す通り、ロシアの金融システムが瓦解しても国際金融システムが揺らぐことはない。むしろ、ロシアの金融システムが国際金融システムから切り離されることで、ロシアルーブルが暴落し、これが楔となってロシアの実体経済が壊れていくというのがまさに起きようとしていることだ。

もちろん、これから到来する「ロシア抜きの世界」では西側陣営も痛みを被る。何より資源供給が今までよりは細るため、資源調達の多様化を模索する必要がある。多少コストはかかってもロシア回避を優先するので、インフレ高進は続いてしまう可能性が高い。プーチン政権が存続するかぎり、この状況が続くとすれば、「ディスインフレの時代」から「インフレの時代」への過渡期にわれわれは立たされているといえるかもしれない。そうした大局観をもって経済・金融情勢の見通し、ひいては為替を筆頭とする資産価格の見通しを作る必要がありそうだ。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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