ロシアのデフォルトは金融システムを揺るがすか 各国のロシアとの貿易、ロシア向け与信を分析
ちなみに、今回制裁に絡んで話題となっているロシア側の外貨準備も2017年以降で急激に非ドル化が進められてきた形跡がある。2017年9月と2021年6月で比較すると人民元は0.1%から13.1%へ急上昇しているのに対し、ドルは46.3%から16.4%へ急低下している。どう考えても意図的にリバランスした結果であろう。思い返せば2014年のクリミア危機当時もロシアに対するSWIFT遮断を求める声はあったのである。
結果論だが、来るべき衝突を見越して西側陣営・ロシアの双方共にお互いから距離を取ってきたという構図が見える。2014年のクリミア危機という前哨戦となる暴挙が、ウクライナ危機における経済・金融面でのショックを緩和する契機になったようである。
「SWIFT遮断」→「ルーブル暴落」→「貿易忌避」
なお、金融関連では3月2日、欧州委員会が追加制裁としてロシア大手7行に対してSWIFTを遮断すると発表したことが注目されている。この点、最大手行のズベルバンクとエネルギー調達にとって重要なガスプロムバンクは対象外としたことで、「骨抜き」という批判が散見される。しかし、現在起きていることを客観的に見る限り、そのような批判は正しくない。
もちろん、当初の最大手行などを対象外とする措置はロシアから欧州への天然ガス供給を温存するための西側陣営の保身的な措置という側面もある。EUの使用する天然ガスの4割がロシア産であり、この売上高(つまり外貨)はロシアに流れることになる。ロシアの世界向け輸出の半分が鉱物性燃料(つまりエネルギー)ということを踏まえれば、ここを断たれればロシアは外貨を稼ぐ手段の大宗を失うことになる(ちなみに、SWIFTは送金を効率化する手段であって、外貨を稼ぐ手段そのものではない。それはあくまで資源輸出である)。
同時に、鉱物性燃料輸出はロシア政府の主たる財源(4割弱)なので、最大手行も含めて制裁対象とすれば、ほぼ確実にロシアの国庫は払底するだろう。そもそも、欧州に対する天然ガス供給停止というロシアにとっては「最強の(西側陣営にとっては最悪の)カード」を切れないのは、そこまでやってしまえば自身の外貨収入が断たれるからだと推測される。このような事情を踏まえると、当初のSWIFT遮断の欧州委員会決定を受けてロシアが安堵している可能性は高い。
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