松井一郎「大阪流の少子化対策、全国でやるべし」 維新の会代表・大阪市長が見る大阪の今と未来

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(撮影:ヒラオカスタジオ)

塩田:維新が目指した大阪都構想は住民投票で計2回、否決となりました。大阪府と大阪市の二重・二元行政の打破という目標に挑戦するために今後、どういう取り組みを。

松井:昨年、大きな仕事は大阪府が司令塔を担うという形で広域一元化条例を成立させました。小さなところでは府・市の対立はあるかもしれませんけど、大きな仕事の権限は大阪府が持ちましたので、今後は都市の経済を牽引するような大規模事業については、大きな対立にならないような仕組み作りができたのではないかなと思っています。

塩田:都構想にもう1回、挑戦する気持ちはありますか。

松井:僕はもうないです。過去のように大阪府知事と大阪市長が話もしないような人になったら、制度を見直すべきだという声が上がるかもしれませんが、今はうまくいっているので、そういう声は上がりません。維新の知事・市長という形であれば、絶えずやり取りしていますから、二重行政は起こらない。制度として条例でルールを作っていますので、二重行政にはならないと思います。

大阪は行政区の数が多すぎる

塩田:都構想が否決された後、大阪市で「総合区」というプランが検討されています。

松井:都構想は東京の特別区制度の導入ですが、総合区は行政区の改善ですから、都構想の代案ではありません。大阪は行政区の数が多すぎるんです。財政的にも意思伝達のうえでも、多すぎるのでは、という議論があります。昭和の時代と比べると、今は行政ニーズが多種多様になっています。それに対応するには「ニア・イズ・ベター」で権限を持つエリアを作る必要がある。それが総合区です。

塩田:大阪都構想の住民投票再否決という結果が出たとき、「大阪市長の任期満了の2023年4月に政界引退」と予告しました。今も同じ考えであれば、大阪市長は残り1年です。市長として、目標としながら、できていなくて心残りな点はありませんか。

松井:ないです。市長としての公約のトップ項目は「重大な児童虐待ゼロ」でした。2011年に橋下徹市長(元大阪府知事)が登場するまでは、 270万人の人口の都市なのに、虐待を受けたときの児童相談所が1カ所しかなかった。橋下市長と吉村洋文市長(現大阪府知事・大阪維新の会代表)でやってきましたが、僕はさらにきめ細かに対応するために4カ所体制にすることにした。完成までにはあと3年かかりますが、すでに着工済みです。

(後編に続く、3月9日配信予定)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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