「日本経済」が韓国に追い抜かれた納得できる理由 同じ構造的問題を抱えながら何が差を生んだ?

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一方、韓国はアメリカに追いつき続けた。1970年の時間あたりの労働生産性アメリカの10%に過ぎなかったが、2020年までに58%に急上昇。まもなく、韓国はこの指標でも日本を追い抜くだろう。

韓国の成長が特に際立つのは、韓国が日本と同じ構造的欠陥を有しているにもかかわらず、これを軽減する方法を見出したからだ。日本と同様、韓国は「二重経済」である。すなわち、韓国経済は、国内製造業の一部と多数のサービス業という、極めて効率的な輸出部門、そしてひどく非効率的な部門で成り立っている。韓国における中小企業と大企業間の生産性格差はOECDで3番目に悪い。

一方、労働力の3分の1以上は、低賃金の非正規労働者で構成されている。 経済が非常に不均衡なため、2019年の韓国の全輸出は、驚くべきことにサムスン電子だけで2割を占めている。これは非常に危険である。

「韓国の未来は日本を見ればわかる」と警告

こうした状況下、ワシントンに本拠を置く韓国経済研究所は、改革をしなかった場合、「韓国の未来は日本を見ればわかる」と警告した。加えて、世界的な競争力を持つ産業がいつまでも「経済全体を動かすのに十分な大きさのエンジン」であり続けることは両国とも不可能だ、と付け加えた。

実際、韓国の1人当たりの成長率は、1980年代半ばの年間9%から2014〜2019年にはわずか2.5%とすでに低下している。もっとも経済が成熟するにつれて成長は鈍化するものであり、2.5%は同期間の日本の成長率(1.1%)を上回っている。それでもOECDによると、韓国に日本のような構造的欠陥がなければ、年間成長率は1〜2%高くなる可能性がある。

いずれにしても、日本と韓国における1人当たりのGDPは、アメリカやヨーロッパを大きく下回っており、韓国は追いつきつつある一方で、日本はこれに後れをとっている、というのが今の構図だ。しかも韓国は構図的欠陥の少なくとも一部を改善するため、より多くの取り組みを行っている。逆に言えば、日本は韓国から学ぶところがある、というわけだ。

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