佐久間宣行「過激な表現やめたくない」と語る理由 テレビよ永遠にという気持ちは「ない」とあっさり

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やたらと企画書を出す若手がいると社内で知られ始め、2年目でネタ特番のディレクターというチャンスをつかんだ。ここで出会った劇団ひとり、おぎやはぎと、後に「ゴッドタン」を作ることになる。辞めるはずの3年目には、異例の早さでプロデューサーに抜てきされていた。

発明や美しさある番組

今やテレビ界の名物プロデューサーとなったが、本人は「裏街道です」ときっぱり。「旅、グルメ、人情が正面のテレ東でお笑いをやってきた僕は、ど真ん中じゃないんです」。

作りたいジャンルを廃れさせないよう、「マジ歌選手権」のライブ開催や「キス我慢選手権」の映画化など、会社をもうけさせるビジネス展開に知恵を絞り、放送外収入のロールモデルを示してきた。予算で勝てないテレ東カルチャーがベースにあるのも強みだ。「よそと同じことをやっていたら勝てない。違うことを常に探しつづける癖は、テレ東育ちのおかげです」。

目指してきたのは「どこかに発明や美しさがある番組」だ。「視聴率は大事だが、視聴率をとっていても尊敬できない番組はある」。

数字から逆算した番組作りに発明はないとし、企画会議に視聴率表を持ち込んだことは1度もない。

情熱を注いできた制作現場はコンプライアンスと炎上社会のはざまで窮屈になるばかりだが、「過激な表現はやめたくない」と語る。

「無分別に人を傷つけるのはダメだが、『クレームが来るからやめよう』を混同する人とは戦おうと思っている。たとえシモネタでも、プロデューサーがびびったらダメだろうと」

そもそも自由度が減ったとは感じていない。

「例えば、BL(ボーイズラブ)のドラマは30年前にはなかなか難しかった。この時代だから広がった表現もあり、つまらなくなったとは思っていないです」

YouTubeなどの動画サイト、Netflixなどの定額配信サービス、SNSなどあらゆるメディアがテレビのライバルとなっている現状も歓迎している。

「僕は面白いものを作りたいだけで、番組がどこで流れようとうれしい人間なので、チャンスが増えてうれしいなと」

テレビよ永遠に、という気持ちは「ないですね」とあっさり言う。

「今も最強のメディアだし、生で大量に届くからできる祭りはまだ多くあるけれど、つまらない番組が残っていくなら配信でよくないですか?」

テレビの未来というより、「面白いもの」の未来に常に焦点がある人なのだ。

「戦わず、つまらないものが勝負に勝つより、面白いものが勝負に勝つ世の中であってほしい。その助けになる方に、自分がいたらいいなと思います」

▼「オールナイトニッポン」プロデューサー冨山雄一氏(40)
仕事ぶりを見ると、3人いる説どころか5人いるんじゃないかと思います。作り手として数々の人気番組を回し、自身のYouTubeチャンネルも週2回アウトプットし、テレビ番組にも出て、ラジオのトークも練り上げる。これだけでも3人いないと無理なのに、舞台、映画、動画コンテンツなどあらゆるエンタメを見る一流の受け取り手であり、奥さんと娘さんにお弁当を作る家庭人の姿もある。いつ寝ているんだろうと。僕のような年下にも物腰柔らかく、部活の仲間のように感じさせてくれる人です。
◆佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
1975年(昭50)11月23日、福島・いわき市生まれ。早大卒。99年テレビ東京入社。「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」「ウレロ☆シリーズ」など数々の番組を手掛ける。19年4月からニッポン放送「オールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティー。21年3月、テレ東退社。フリーで活動中。
◆オールナイトニッポン
67年10月にスタートしたニッポン放送深夜番組。現在、深夜1時枠以外に、深夜3時枠の「0(ZERO)」、午後10時枠の「MUSIC10」「GOLD」など、オールナイトニッポンのブランドで多くの番組が放送されている。

(梅田恵子)

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