バイデン政権はウクライナを見捨てざるをえない 中間選挙を控え多くのジレンマに悩まされる

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また、バイデン政権は選挙公約どおり昨年、アフガニスタンからの軍撤退でアメリカ史上最長の戦争を終結したばかりだ。アメリカ国民は戦争疲れで、新たな戦争に参加することには超党派で抵抗が想定される。

2月24日にロシア軍がウクライナ侵攻を始めた後に実施した世論調査によると「経済制裁がロシア軍を阻止できない場合、アメリカは軍事行動を取って阻止すべきか」との問い対し、58%もの国民がアメリカは軍事行動をとるべきでないと回答している(CNN世論調査、2月25~26日)。

アメリカが軍を派遣せずにプーチン政権に対抗できる方法としては、たとえばサイバー攻撃のほか、ウクライナへの武器供与や諜報活動による協力が残されている。しかし、大規模なサイバー攻撃は軍派遣と同様にロシアとの直接対決となり、エスカレートしかねない。また武器供与についても、輸送ルートがロシア軍によって封じられたら、今後、内陸のウクライナ軍へ届けるのは困難を極める。また、ウクライナ軍の指揮系統が混乱する中、情報提供による支援の効果は薄れていく。

その結果、バイデン政権はEU(欧州連合)や日本などと連携した経済制裁に頼るしかない。2014年クリミア併合後の制裁発動をめぐる、オバマ政権の失敗の経験を踏まえ、今回、バイデン政権は同盟国と経済制裁を入念に準備してきた。政権の情報によるとロシア軍のウクライナ侵攻の1カ月前には制裁リストが完成していたという。過去にないスピードでEUや日本をはじめ各国と連携して発動した強力な制裁の評価は高い。

経済制裁ではウクライナの政権交代は避けられない

だが、当然、ロシア側に死傷者をもたらさない制裁では、プーチン大統領の考えを変えるのは容易でない。変えられるとしても相当先のことになるであろう。バイデン大統領は2月24日の記者会見で制裁の効果について1カ月後に再度検証したいと語ったが、毎日、攻撃を受け戦争で一般市民の死傷者が積み上がっていく中、本来、ウクライナ国民は1日も待てる余裕はない。

今後の制裁強化と風評被害を考慮する欧米企業によるロシア事業の停止などで、徐々に同国経済がダメージを受けるのは確かだ。中長期的にはプーチン大統領に対し側近や経済苦難に陥ったロシア国民などからの圧力があるとしても、プーチン大統領が軍撤退を判断するとは限らない。いずれにしても、圧倒的な強さを見せるロシア軍を制裁で阻止することはできず、キエフ陥落とともにウクライナは政権交代の運命にある。

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