バイデン政権はウクライナを見捨てざるをえない 中間選挙を控え多くのジレンマに悩まされる

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キエフ陥落の阻止は難しい中、アメリカはその後の巻き返し策を準備するしかない。ロシアがウクライナで傀儡政権を樹立した後、同国の反ロシア勢力はゲリラ活動を続けるであろう。彼らはウクライナ西部あるいは隣国ポーランドなど国外に拠点を置くことが想定されている。1980年代末にソ連軍がアフガニスタン撤退に追い込まれたように、反ロシア勢力支援を通じウクライナからロシアが撤退せざるをえない状況を創造することをアメリカは狙うであろう。したがってバイデン政権はウクライナ国民を完全に見捨てることはない。

だが、キエフ陥落後にアメリカ政府をはじめNATO諸国が反ロシア勢力を国外から支援をすることにはリスクも伴う。たとえば反ロシア勢力が身を置くポーランドなどにロシア軍が潜入し攻撃することで、NATO軍と直接対決するリスクもある。ウクライナへの派兵はしないことを明確にしているバイデン大統領だが、隣国での争いから戦争が拡大するおそれがある。

経済的に苦しくなるEUとの結束に亀裂も

またEUにとっては自らに跳ね返ってくる制裁の影響が大きいため、内部で時が経つとともに亀裂が生じ、アメリカがまとめてきた連携が崩れていくリスクもある。まさにこの欧米間の亀裂にプーチン大統領は期待しているとも指摘されている。

アメリカはすでに多くの制裁を発動済みであるが、まだロシアに対する制裁を強化する余地はある。クリミア併合後の対ロシア制裁を、国務省で作成した大西洋評議会のエドワード・フィッシュマン上席研究員によると、アメリカがロシアに科すことができる最高レベルの制裁のうち、バイデン政権は現在、7~8割の発動を発表済みだという。上記CNN世論調査で62%の国民がアメリカ政府はロシア軍を阻止するためにもっと対策をとるべきと回答している。

だが問題は残り2~3割の追加制裁にはエネルギー産業への追加制裁などが含まれ、仮にそれらも発動すればロシア経済だけでなく世界経済や自国経済にも大きく影響が及びかねないことだ。

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