怒ることで「変えられる」と判断した(左側の箱に仕分けた)ときに重要なのは「いつ、どのように、どの程度、それらを変えるのか」ということ。怒って変えられると思ったのに、上手に怒れなければ余計にイライラが募ってしまいます。対して、怒って「変えられない」と判断した(右側の箱に仕分けた)ときに重要なのは、具体的かつ現実的な対処策を持つことです。
笹崎さんは、アンガーマネジメント的技法を駆使されたわけではないのでしょうが、「内定取り消しの現況を変えられる(変えたい)」と判断されたからこそ、箱の左側に入れる選択をし、「今すぐ、法廷において、正々堂々と是非を問う」ための行動を取ったのでしょう。
これが当初の「泣き寝入りするしかないと思った」という判断なら、「内定取り消し」に対し具体的かつ現実的に、たとえば「気持ちを切り替えて、新たな就職先を探す」といった対処を取ることになるでしょう。
日テレ側は初公判を欠席、今後争う構えだが……
どちらを選択するのも自分自身ということになりますが、自分の気持ちに正直な選択をしたほうが、「後悔」という「一次感情(プライマリー・エモーション=怒りのもと)」の減殺には寄与しそうです。
「内定取り消しの無効」を求める地位確認訴訟の第1回口答弁論が11月14日、東京地裁で開かれました。笹崎さん側の代理人は、本訴に至った経緯を説明。内密に事前折衝を行ったうえで、「仮処分の手続きをしましょうと言いましたが、出された判断に応じられない、と日本テレビが答えたため、本訴に至った」としています。また、内定取り消しを無効にしてほしい、という訴訟の性格上、4月に入社できるように「進行をしっかりしてほしい」という要望も出しました。
日本テレビ側の代理人は出廷しませんでしたが、請求棄却を求めており、争う姿勢を示しました。次回以降に具体的な反論をするようです。一般的に裁判は長引くものです。笹崎さんの現況は厳しいといえますが、世間から笹崎さんへの同情論が多いことも確かです。
筆者は特定社会保険労務士でもあるのですが、今般の日本テレビの内定取り消し理由には、やや強引さを感じます。そして仮に裁判において、水商売歴があったことを理由に内定取り消しが認められるようなことになれば、そうした司法判断は職業に貴賤をつけたと問題視されてしまうかもしれません。
笹崎さんとは状況が異なりますが、実際に女性アナウンサーとして活躍中だったにもかかわらず、スキャンダルがもとで勤務するテレビ局を退職することになりながらも、逆境をバネに司法試験に合格した菊間千乃さんや、フリーアナウンサーとしてご活躍中の夏目三久さんのような好例もあります。
これらピンチをチャンスに変えた事例も、人生の分岐点の場面で「いつ、どうやって、どの程度」Fight(闘争)するかを冷静に選択、「怒りを建設的パワーに転換しよう」とするアンガーマネジメント的思考法と相通じるところがあります。
笹崎さんが逆境の中、今後どのような好機を得られるかが注目されます。裁判係争中であっても、救いの手を差し伸べる人は少なくないのではないでしょうか。アンガーマネジメントに興味を持たれた方は、拙著『パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)をご高覧ください。
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