11月19日解散・12月総選挙へ、緊迫する政局 「消費再増税の先送り」を決断した舞台裏

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安倍首相は「負けない選挙」へと一気に舵を切った(写真は4月の日米首脳会談の共同記者会見で。撮影:日本雑誌協会代表)

安倍晋三首相は今週に衆議院を解散し、12月中にも総選挙を実施する意向を固めた。「11月19日(水)」解散、「12月2日(火)」公示、「12月14日(日)」投開票、というのが最有力だ。

第一報は11月9日付の読売新聞朝刊。1面左肩で「増税先送りなら解散 年内にも総選挙」と打った。満々たる自信があれば、「総選挙へ」としたはずだが、解散風を吹かす効果はあった。シナリオとしては、17日に発表されるGDP(国内総生産)の速報値、18日に終わる消費増税の点検会合の結果を見て、景気回復を最優先するため、安倍首相が「消費再増税の先送り」を決断。経済対策を指示し、アベノミクスの信を問うとの大義名分で、解散に踏み切る段取りだ。

安倍首相は官邸で、7日に山口那津男公明党代表、8日に太田昭宏国土交通相と会談し、年内総選挙を伝えたとみられる。11日の会見で山口代表は選挙準備を党内に指示したと発言した。公明党にとって来春の統一地方選直後、16年の参議院選とのダブル選は、どうしても避けたい。一方、野党を見ると、統一候補調整などの選挙協力はほとんど進んでいない。民主党は小選挙区の半分で候補者を擁立できればいいほうだ。

政権与党のトライアングル

では肝心の自民党内はどうか。政権与党の中枢は現在、安倍首相・菅義偉官房長官─谷垣禎一幹事長─麻生太郎副総理兼財務相のトライアングルで、成り立っている。

うち谷垣幹事長は、3党合意で消費増税を決めた本人であり、再増税派。が、9月の内閣改造で幹事長を引き受ける際、安倍首相から「総理総裁の自分の判断に従ってほしい」とくぎを刺された。麻生財務相もトップの決定には絶対従うタイプといえる。最大のキーマンは菅官房長官だ。再増税に慎重な議員連盟を率いる山本幸三議員の裏で、糸を引いていると見る向きもある。菅官房長官と同じ神奈川県の選挙区で親しい、上田勇公明党政調会長代理も、次世代のリーダーであり再増税慎重派だ。

再増税先送りの外堀はもう埋まっている。点検会合の有識者45人のうち、再増税の容認:慎重は半々だろう。ただ、中でも官邸に陣取る本田悦朗、浜田宏一の両内閣官房参与は、慎重派の代表格。本田氏は再増税時期を「17年4月」と主張している。

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