小田急の運転席、他社と一味違う「添乗者」の任務 運転士「実は孤独」後輩も声がけ安全パトロール
鉄道好きの人は電車のどこに乗ることが多いだろうか。最有力候補として挙げられるのは、車両の先頭、乗務員室後ろのいわゆる「かぶりつき席」だ。関東の一般的な通勤車両は窓を背に座るロングシートが主流のため車窓はあまり期待ができない。それに対して、かぶりつき席は迫力ある「前面展望」や運転士のきびきびとした動作を見ることができるのが魅力だろう。
最近はJRや私鉄の有料特急で、展望席が人気だった車両が引退を迎えたり、新型車両に展望席を設けなかったりと前面展望をじっくり楽しめる機会が減ってきた。新造車両にわざわざ展望席を設ける京浜急行電鉄などは特異な例だが、前方の眺めを期待するなら通勤電車のほうが向いていると言えそうだ。
隣の人は何をしている?
そのかぶりつき席にいると、運転士のほかにもう1人が立って乗務している場面をよく見る。だいたいは、ベテラン社員が若手を指導するためか、駅から駅へ移動するために乗っている。が、小田急電鉄の場合、少し変わった光景に出くわすことがあるかもしれない。
運転士とさほど年齢が変わらず、むしろ後輩にあたる社員が一緒に乗務することがあるという。移動のためでも、もちろん指導のためでもない。着けている腕章には「安全パトロール」の文字。この若手社員、いったい何をしているのだろうか。
同社では、運転士の隣に立っている人は「便乗」か「添乗」で乗務している。便乗は、自分が運転を担当する駅まで、または所属する電車区に戻るまで、ほかの運転士の電車に乗せてもらうことを指す。と言ってもその日の仕業表(乗務のスケジュール)に記された立派な仕事で「2人で運転しているつもりで乗っているので前方注視も信号称呼もする」(ベテランの運転士)。
もう1つの添乗はイメージ通り、助役や指導主任といった立場が上の社員が担当する。同社では喜多見、大野、海老名、足柄に運転士と車掌が所属する電車区・車掌区がある。小田原に近い足柄駅にある足柄電車区の指導主任、関口隆さんは、添乗の目的を「運転士の仕事をずっと1人で続けているとどうしてもクセが出てくるのでそれを指摘したり、健康状態を観察したりして、お客さまの安全を守る目的で一緒に乗っている」と説明する。
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