動物園「肉食より草食獣のほうが事故起きる」なぜ 旭山動物園元園長の獣医が語るヒヤリ体験談
ニシキヘビを治療している際にも、驚かされたことがあります。そのニシキヘビは旭山動物園に来てから1年間、エサを食べておりませんでした。ニシキヘビなど、大型のヘビは食べたものの消化、吸収が遅いので、食事の回数が少なくても問題がないのですが、さすがにそろそろ何か食べさせて元気をつけてやらねばと思い、差し餌をすることになりました。
ニシキヘビは長い身体で巻き付いてきたりして危険ですから、飼育係と綿密に打ち合わせをしました。飼育係に尾をつかんでいてもらって、私は首をつかまえて、ぐるりと巻き付かれないようにして、3人目の人に口を開けてもらい、エサをノドまで押し込むことになりました。口にエサを入れてノドを絞って、お腹の中に落としていきます。
うまくいき、「よし!」と思ったのですが、気づくとなぜか身体が動きません。不思議に思い、見下ろすと、なんと私のしゃがんだ脚に、ニシキヘビが自分の身体を二つ折りにして巻き付いているではないですか!
ぐるりと巻かれるより、力は出ないと思うのですが、それでもまったく脚は伸ばせませんでした。別の人に引きはがしてもらって、やっと脱出することができました。
自分も若く、現役で柔道をしていたころですから、力には自信があったのですが、とても太刀打ちできませんでした。野生ではシカなどを巻き付きで窒息死させてから、捕食する生き物ですからね。ものすごい力でした。
初心者はうっかりミス、ベテランは過信で事故を起こす
動物園の事故は、初心者かベテランが起こすことが多く、中堅の人は起こしません。初心者はうっかりミスをするし、ベテランは自分を過信したことによる事故を起こすのですね。
また相手の動物をなめてかかっているときにも事故は起こりやすいです。肉食獣や毒を持つものなど、危険だと思うものは身構えるので、逆に事故は起きにくいのですが、草食獣やおとなしそうな動物にあたると、油断するため起きやすいのですね。先にあげたラクダやシマウマがいい例です。
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