「相手を信じやすく、騙されやすい人は、すぐにロシア人の格好の的となり、騙されてしまう。このタイプの人間には、嘘の約束をするのが一番だ。逆に、頑なに相手の要求を拒否する人よりもずっと扱いやすい。だって嘘だとわかっても、相手は『そんなはずはない。なにかの誤解でしょう』と勝手に信じ込んでくれるからね。だから、ロシア人はどんどん嘘の約束を重ねていけばいいだけのこと。実際には何も実行しなくてすむし、失うものはないので、こんな楽な相手はいない」(72ページより)
これは、中村氏の友人である元ソ連共産党地区委員会幹部の発言だ。2019年2月7日、モスクワ・クレムリンで食事をしながら北方領土交渉の行方について話しているときに発せられたものだという。だとすれば、日本はソ連、ロシアにだまされ続けているということになる。
しかし、それはさておいても、もしこれが本当にロシア人の国民性の1つであるならば、今回のウクライナ情勢が少しだけ理解しやすくなるような気もする。
「約束」をめぐるトラブル
わたしがロシア人同士の会話でよく耳にするのは、約束を守らなかったことをめぐるモメ事である。時々というよりも、「とても頻繁」に聞く。人間関係に亀裂が走り、罵り合う場面も、なんども目撃している。
だがわたしは昔から、約束を交わすときのロシア人の大げさな表現が気になっていた。
「わたしは約束を、厳粛に守ることを誓います」
このことばを聞く限り、忠実に決め事を実行してくれるものと信じてしまう。少し違和感を抱きながら、「こんなに大げさにいってくれなくてもよいのに」と感じることがあった。
いまから考えると、一瞬、誠実さが伝わるかのような言葉だからこそ、相手を信用してはいけないということなのだろうか。(166ページより)
だがわたしは昔から、約束を交わすときのロシア人の大げさな表現が気になっていた。
「わたしは約束を、厳粛に守ることを誓います」
このことばを聞く限り、忠実に決め事を実行してくれるものと信じてしまう。少し違和感を抱きながら、「こんなに大げさにいってくれなくてもよいのに」と感じることがあった。
いまから考えると、一瞬、誠実さが伝わるかのような言葉だからこそ、相手を信用してはいけないということなのだろうか。(166ページより)
ちなみにこれは、約束の金額以上を吹っかけてきたタクシー運転手とのトラブルについて書かれた部分から引用したものだ。それによると、中村氏が「約束が違う」と指摘しても、運転手は「なぜ、あなたは(かかる時間についてだけではなく)距離について言及しなかったのか。不満を口にするならば、乗車するまえに確認すべきであった」と逆に責めてきたのだそうだ。
そういった経験を通じ、中村氏は1つのことに気づいたという。
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