オレンジ革命の失敗を受けて、ヤヌコビッチ氏は自由で公正な選挙で10年に権力の座に就いた。プーチン氏は12年に3期目のロシア大統領に就任した。ユーラシア連合の創設がプーチン大統領の綱領の重要な部分だった。
ウクライナは07年から自由貿易と連合に関する協定に向け欧州連合(EU)と交渉を続けたが、協議は12年の早い時期に完了した。この協定案は、ウクライナとロシアの既存の自由貿易協定とは両立可能だったが、プーチン氏のユーラシア計画とは両立できなかった。
1年余り前、ヤヌコビッチ大統領や彼が党首の地域党ですら支持していたEUとの協定に背を向けさせるよう、ロシアは仕向けた。その後は知ってのとおりだ。ヤヌコビッチ大統領がこの協定を破棄し、民衆が立ち上がって同大統領を失脚させ、ロシアが2度の侵略を行い、ウクライナの東部ドンバス地方で数千人が殺害された。
クリミア併合の狙い
ロシアはクリミアを併合し、ドンバス地方の寂れた重工業地帯を支配する以上のことを目指している。その狙いは、ウクライナが西側諸国入りすることを防いで東寄りにさせること。そして、ヤヌコビッチ政権を打倒した革命が衛星諸国でまた起きるリスクをなくすことだ。
ロシアは近隣諸国にとって依然として強国だ。ロシアの修正主義的な野心を阻止できるのはウクライナの強さと決意だけだ。選挙によって、抜本的な改革を決意した政府が生まれなければならない。
そうした政府が改革を実施するには、国際通貨基金(IMF)による支援策の強化が不可欠だ。でたらめなエネルギー政策は根本的に変えなければならない。
もし改革が失敗すれば、ロシアがキエフで目的を達成するまで、その政策を継続することはほぼ疑いがない。プーチン氏は急いではいないが、自らが望むものをはっきりとわかっている。この場合のロシアはドニエプル川でとどまることはない。修正主義があからさまな失地回復主義に転じるかもしれない。
その頃には、対立拡大を食い止めるには遅すぎるかもしれない。だから数十年に及ぶ失敗を乗り越えて、力強く民主的なウクライナが生まれてくることが必要だ。今回の選挙はウクライナにとって決定的に重要だが、同時にロシアが民主的な欧州の真の一員になることを促すカギをも握っている。
(週刊東洋経済2014年11月15日号掲載記事を一部加筆・修正)
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