稼げないソニー! テレビ新製品を連発し、出荷台数急増でも…[上]
液晶テレビの世界市場シェアはサムスンに続く2位(ディスプレイサーチの調査、09年の販売額ベース)につけている。にもかかわらず、今期も赤字となれば直近5期だけでも合計赤字額は約3200億円に達する。テレビ事業は、デジタルカメラや金融など、ほかの事業の稼ぎに支えられながら延命されているといってもいい状況だ。
もちろん、この惨状に対し、経営陣は決して手をこまねいてきたわけではない。むしろ、打てる手は打った。だからこそ赤字継続はショックなのだ。
ストリンガー会長はトップ就任から終始、エレキ事業の生産設備・人員リストラを進めてきた。特に、ブラウン管時代の非効率な開発・生産体制を引き継いだままだったテレビ事業については、08年末以降に愛知県一宮やメキシコ、東欧の工場を閉鎖・譲渡するなど、生産固定費を大幅に圧縮するアセットライト戦略を突き進めた。
携帯電話端末の合弁会社であるソニー・エリクソンでファブレス(工場を持たない)経営を学んだ吉岡浩副社長が現場に立ち、製品設計も根本から見直している。部品や設計を単純化・共通化できコスト削減につながるなら、デザインへのこだわりも捨てた。スリム化を図りながら販売台数も右肩上がりで拡大させており、その意味ではソニーのブランド力は依然として強いことを証明した。
しかし、それでも黒字化が難しい理由をソニーの経営陣はよくわかっている。「テレビ事業はパネルメーカーに主導権を奪われてきた。そこに忸怩(じくじ)たる思いがある」。吉岡副社長は09年秋、記者を前に胸中を吐露している。
コストの7割を占めるコアデバイスを外部に委ね、2割超の単価下落の中で薄利を確保するビジネスモデルは、外部環境の変化で瞬時に機能不全に陥る。これまでにも、需給逼迫期にサムスン合弁工場からすらもパネルを十分調達できず販売機会を逸失したことや、大量調達した結果高値でパネルをつかみ、損益を大幅に悪化させたこともあった。【下に続く】
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(杉本りうこ =週刊東洋経済2010年10月30日号)
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