稼げないソニー! テレビ新製品を連発し、出荷台数急増でも…[上]
8月下旬、東京・品川にあるソニー本社ビルの会議室。ここにテレビ事業の幹部数十人が招集され、緊急会議が開かれた。会議で明らかにされたのは、今2011年3月期もテレビ事業の赤字が続く可能性が高いというシナリオだった。
はじき出された赤字見通しはおよそ250億円。前期の赤字750億円から大幅に改善するものの、必達目標と掲げていた黒字化は絶望的な状況だ。急激な円高という逆風があったとはいえ、昨年度までのリストラ効果は大きい。今度こそ間違いなく黒字化できる、と考えていただけに、集まった幹部は、誰もが深いため息をつき、うなだれた。
今期の折り返し地点すら迎えない時期での黒字化断念。最大の要因は、ドル箱である北米市場の需要が想定を大きく下回ったことだ。米ディスプレイサーチの調べによると、10年の北米の市場規模は年初予想から300万台ほど落ち込み、3850万台になる見通し。北米だけでなく欧州なども伸び悩んでおり、ソニーは期初に社内で掲げた世界販売計画2700万台を200万台ほど引き下げざるをえなかった。
計画の下方修正を迫られているのはソニーだけではない。しかし、ソニーの苦悩が深いのは、テレビの原価の7割を占めるキーデバイス(基幹部品)である液晶パネルを、まったく内製していない点にある。