ミラー氏、「TPP交渉から日本を外すべき」 中間選挙で民主党完敗、TPP交渉の行方

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――ただ、TPAはTPP協定成立の必要条件ではないのでは?

そのとおり。クリントン元大統領は中国との通商問題正常化法案を議会通過させるためにTPA法案のような“追い越し車線”は使わなかった。下院も上院も何の修正もなく法案を通過させた。大統領が懸命に働き、リーダーシップを発揮したからだ。当時、上院金融委員会にはロス委員長、少数派代表ではモイニハン議員という2人の強力な指導者がいた。それが幸いした。クリントン政権は政治的に多くの時間と努力を払った。

しかし、議会から通商交渉権限を得ずに法案を通過させたのは異例であり、それがないとTPPのような複雑な通商協定を取り扱うのは非常にむずかしくなるだろう。

懐疑的な議員の説得は別問題

――中間選挙はTPP交渉にどのように影響する?

オバマ政権にとっては、中間選挙後に通商交渉の話をするのが楽だろう。もう選挙のことを心配しないで済むからだ。もちろん、TPPに対して懐疑的な議員を説得しなければならないが、それは別の問題だ。

上院共和党は通商法案を協議するには比較的楽な相手だ。マッコーネル院内総務はすでにゴーサインを出している。彼は2014年初から通商政策についてはオバマ政権と一緒にやれると踏んでいる。

上院金融委員会の共和党のオーリン・ハッチ委員長はTPP法案については民主党のワイデン議員より与しやすい。ワイデン議員には同党内に懐疑的な議員がいる。たとえば、ジェイ・ロックフェラー議員(退任予定)、オハイオ州のシャロッド・ブラウン議員、ペンシルベニア州のボブ・ケイシー議員、ミシガン州のデビー・スタベノー議員などだ。彼らは金融委員会の有力メンバーであり、かねてからTPP法案には懐疑的だ。

ハッチ委員長には多くの支持者がついている。元米通商代表部代表のロブ・ポートマン議員(オハイオ州)もその一人だ。金融委員会は通商法案には積極派に転じている。加えて、共和党の上下両院の通商問題をめぐる協調関係が改善している。満足のいく結果が出やすくなっている。

――TPP法案のすべてがご破算になるようなシナリオはないか。

それはいつでも起こり得る。通商交渉は破綻することがある。しかし、TPPのケースでは起こらないと思う。TPP参加者たちは自分たちが何をやっているのかをよく知っている。参加12カ国はお互いに30~40項目の自由貿易協定について交渉してきている。最終合意と現段階との開きはそれほど大きくない。日本の農業を除いてTPPは貿易システムに大きな衝撃を与えることにはならない。すべての参加国はTPPに大きな政治的投資を行ってきている。

本当の問題は、それが本当にわれわれの求めている21世紀型の高規格の通商協定なのか、それともそれほど野心的ではないのか。それほど野心的ではなくとも、必ずしも悪くはない。初期の要請には届かずとも、太平洋地域のためにはなるだろう。

そして、オバマ政権のアジア地域への“リバランス”という戦略的目標の文脈では、TPP交渉の破綻は“外交政策の不始末”ということになる。したがって、最終的な合意にいたるのではないかと私は思う。

――TPPの法案化はどう展開するか、そのスケジュールは?

中間選挙後、新しい議会が2015年1月に始まるまでの“レームダック”会期には何も起こらない。1月まではどの党が上院を完全に支配するか、まだ分からない。それまでに決戦投票を必要とするところがいくつかあるからだ。

オバマ政権としては、議会で行き詰っている大統領任命リストなど、レームダック会期中に片づけなければならない優先課題がある。議会がレームダック会期中にTPPを進めようとしても、上院には通商法案はないし、レームダック会期という不安定な状況下で複雑な法案を考え出すのは至難の業だ。

したがって、TPP法案が前進するのは来年1月からだろう。議会でTPA法案が通るのは2015年央となろう。その時点で米通商代表部はTPP協定の最終合意を取り付けることになる。それに日本が参加しているのか、いないのか。ともかく、2015年10月までにホワイトハウスでTPP協定の調印式が執り行われることになるだろう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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