日本の知財戦略は、どこがズレているのか

グローバル時代に対応した戦略とは?

知的財産を巡る環境は、大きく変化している。変化のスピードが速いうえに、質的変化を遂げつつあり、知財戦略を誤れば、企業そのものの存亡に関わる時代といえる。11月27日開催の「IP2.0シンポジウム〜未来の”モノ”・”コト”を創出する新パラダイムへの提言〜」を前に、現在の知財戦略の論点について、東京大学政策ビジョン研究センターの渡部俊也教授(写真右)、IP Bridgeの吉井重治社長(写真左)に対論していただいた。

 

――新日鉄とPOSCO、東芝とサムスン電子の間での情報漏えい事件の裁判を通じ、知財の国外流出について関心が高まっています。

渡部:日本では、退職社員が企業秘密を持ち出すということが、ずっと横行しています。もちろんサイバーセキュリティ的な攻撃も毎日のように起きている。未遂に終わる事件もたくさんある。しっかりした会社の場合、そうした情報の入ったサーバーを常時モニターしているため、突然ダウンロードを始めた、ということを把握できる。でも、そういうことを把握できるのは、しっかりした会社。ほとんどの会社は気づかずに、多くの情報を抜き取られています。

問題は盗んだ者への罰則が甘い、ということ。日本の営業秘密保護法制は遅れている。アメリカでは経済スパイ法がある。アメリカには、いわゆるFBIの世界がありますし。それから、これはあまり知られていませんが、韓国も10年ぐらい前からものすごく法制の強化をして、すでに200件ほどの摘発がなされている。韓国もそういう意味ではアメリカの経済スパイ法とちょっと似たような法律を持ち、知財の流出を防ごうとしています。

法律の問題だけでなく、日本の企業は「会社の恥だから」ということで内々(ないない)に処理する場合が多い。そのため実態の解明が進んでいない、という面もある。

企業戦略の中心に据える必要がある

吉井:経営側の意識改革も重要で、経営トップ自身が知財は経営にとって重要であるという意識を高く持ち、きちんと情報管理を含む知財戦略を立てなければならない。「特許のことは知財部に任せておけばいい」とはせず、経営戦略の中心に据える必要があります。

なぜならば、どれだけ監視をしても、盗もうと思えば盗めてしまう。法律で縛るのではなく、社員が「会社の秘密を持ち出すって家族に誇れる仕事じゃないよな、そんなことをしたら仲間に迷惑かけてしまうよな」と思えるかどうかが大事です。そういうカルチャーを作っていくことが大切。そのためには、会社として、知財をいかに重視しているか、ということを示す必要があるのです。

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