親からの「帰ってこい」から逃れるには? データで就職環境の厳しさを説明するべき

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日本企業が生き残り、成長していくには、海外にモノやサービスを販売していかなくてはなりません。地方を地盤とする企業でも海外展開する時代なのです。地元企業に就職しても、実際の勤務地は海外ということは珍しくなくなるため、地元で親の面倒を見ることはできなくなる可能性があります。

もちろん、親御さんの言い分にも、耳を傾ける必要があります。実家に住むことで生活費などのコストが削減できるメリットもあります。さらに地元の発展に貢献できるという点も魅力でしょう。何が何でも東京で勤めたいと頑なに考えるのではなく、柔軟に考えてもいいかもしれません。ただし、最後に決断をするのは、あなたです。後悔しないようにしてください。

Q2:最近は就職が楽になったというニュースが多いので、その分、親の期待が大きくなっています。偏差値上位の大学なので、簡単に有名企業に入社できると思い込んでいるのですが、大きなプレシャーです。私は就職スケジュールが変更になるので不安でたまりません。どうすれば親に就活の現状をわかってもらえるでしょうか。

景気回復で企業の採用人数は増加しています。だからといって就職が楽になったとは言い切れません。これは今年2014年3月に卒業した学生の動向を見るとよくわかります。

文部科学省の学校基本調査によると、2014年3月に大学を卒業したのは全国で56万5571人いました。このうちフルタイムの仕事に就職したのは69.8%でした。リーマンショック直後が60.8%でしたから、就職率が改善しているのは事実です。

しかし、その一方で就職も進学もしない学生が6万8481人もいました。卒業生全体の12.1%にも達します。さらに、非正規社員とバイトを加えると10万5258人となります。

大学を卒業したにもかかわらず、18.6%の学生が安定した進路に進めなかったのです。この数字を親に見せれば、就職するのが簡単ではないことがわかってもらえると思います。内定を複数もらっている学生がいる一方で、内定をひとつも取れなかった学生もたくさんいるのです。

人気有名企業には1万人を超えるエントリーがあります。前年に100人採用した企業が採用数を倍増の200人にしたとしても、9800人は落ちるのです。採用数が大幅に増えても焼石に水です。大学入試よりも競争率ははるかに高いのです。自分が入りたい企業に入社するのは簡単ではありません。親にはこうした数字を示しながら就活について説明してください。

スケジュール変更で就職浪人が増加!?

また、現3年生から就活スケジュールが変更になります。これまでは3年生の12月にエントリーや会社説明会がスタートし、4年生の4月から選考開始というスケジュールでした。

現3年生からは3年の3月にエントリーや会社説明会がスタートし、4年生の8月から選考開始となります。就活が後ろ倒しになったということは、その分、就活期間が短くなったということです。

これまでは、大手企業の内定は5月上旬までに出ていました。大手企業の内定を取れなかった学生は、6月から気を取り直して卒業までの10カ月の間に中小企業から内定を得ていました。

しかし、現3年生からは9月に大手企業の内定が出るとすると、ここで内定を取れなかった学生は10月から中小企業向けに就活することになります。卒業までは6カ月しかありません。しかも年末・年始は採用活動がストップしますし、1月には後期試験があります。大学の卒業式は3月の中旬というケースが多いことを考えると、卒業までに残された就活生期間は実質4カ月程度でしょう。

就職関係者はスケジュール変更で就職できない学生が増えると予想しています。2012年に政権交代してから景気は回復傾向にありますが、大学生の就職が楽になったわけではありません。親にはこうした現状を認識してもらったうえで、適切にサポートしてもらえるようにしましょう。

就活に関する悩み、質問は、こちらにお寄せください。

(撮影:風間仁一郎)

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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