サムスンショックが示す韓流経営の賞味期限 業績低迷にあえぐのはサムスンだけではない
こうした中でサムスンは、9月末に「アイフォーン6」の対抗馬と目される「ギャラクシーノート4」など2機種を発売した。が、韓国の経済誌『中央日報エコノミスト』のキム・テユン記者は、「今年第4四半期(10~12月)もそれまでの落ち込みを回復するには至らず、営業利益は4兆ウォンを下回るというのがコンセンサス」と悲観的だ。
業績が厳しいのはサムスンだけではない。
鉄鋼大手のPOSCO(ポスコ)や半導体のSKハイニックスは順調だが、現代自動車では14年第3四半期の営業利益が前年同期比18%減少。米国での販売が伸び悩むうえ、ウォン高の影響が直撃した。造船大手の現代重工業も、船舶価格の下落と海洋プラント事業が振るわず、14年上期は営業赤字となった。
韓国内では、日本の「アベノミクス」による急速な円安に対し、怨嗟の声も少なくない。確かに円安による韓国企業のバランスシートへの影響は深刻である。
だが「韓国経済は円安など為替よりも、新興国、特に中国の景気減速の影響を受けやすい」と前出の向山氏は指摘する。実際、円安でも日本の輸出が増えていないことや、韓国企業も海外生産を拡大させてきたこと、日本企業と韓国企業のマーケティングゾーンが違うことなどを、同氏は根拠として挙げる。
経済構造の変革期
「韓国経済を支えてきた構造が曲がり角を迎えている」(藤田東アジア研究所の藤田徹代表)という指摘も聞かれる。大手商社で韓国ビジネスに長らく関与し、サムスンのグループ企業にも出向した経験を持つ藤田氏は、「オーナー集中という財閥経営が持つ強みが強みではなくなり、より効果的な企業ガバナンスが求められる時代に入った」と説明する。
大韓民国建国以来、韓国経済を牽引してきたのは財閥であるが、現代自動車など大手財閥の多くが目下、世代交代を迫られている。サムスンでは、創業者の李(イ)秉(ビョン)哲(チョル)氏、現在病床にある二代目の李健煕(イ ゴン ヒ)会長と続いたオーナー経営が、三代目とされている李在鎔(イ ジェ ヨン)副会長へと移行している。
オーナーの考えに従っていればよい時代は過ぎ、新たな経営者が新たなパラダイムで経営を始めるべき時期に来ているが、「その方向性がまったくわからない」(藤田氏)。
サムスンは新たな成長軸として医療・医薬、自動車関連部品などを打ち出し、関連企業を買収するなど本腰を入れている。だが、それら事業の成長性については、いまだはっきりとした成果が見えてこない。岐路に立つ韓国企業が輝きを取り戻すにはまだ時間がかかりそうだ。
(「週刊東洋経済」2014年11月8日号<11月4日発売>掲載の「核心リポート01」を転載)
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