「不況は7年間続く」という予測の真実味--ロバート・J・シラー 米イェール大学経済学部教授
今年8月、ワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウムに、各国の中央銀行総裁と著名なエコノミストが集結した。議論は、世界経済に関する悲観論を展開した一つの論文に集中した。
その論文は「崩壊の後」と題され、メリーランド大学のカーメン・ラインハート教授とアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのヴィンセント・ラインハート研究員によって書かれたものである。同論文は、ラインハート教授とハーバード大学のケネス・ロゴフ教授との共著『This Time Is Different』を基に書かれたものである。
同論文は、過去8世紀にわたる金融危機前後の経済状況を比較して、「危機後の10年間の住宅価格は危機前を大幅に下回り、失業率も上昇している」と主張している。その分析が妥当なら、さらに7年程度、厳しい経済状況が続くことになる。
経済理論は十分に発展しておらず、経済原則や数学モデルを使って大きな経済の転換点を予測することはできない。そのため、経済分析の手法に歴史的な要素を取り込まなければならない。歴史は“厳密な”意味で科学ではないが、大きな危機を理解するためには歴史を調べてみる必要がある。
さらに、世界全体にも目を向けなければならない。多くの経済学者は、最近の自国の歴史は研究している。しかし、大きな金融危機は一国の基準だけで判断することはできず、危機がどう展開するかを知るには歴史を広範に調べる必要がある。