"iPhone決済"、激突した「業界のカベ」の正体 問われる「消費者利益」のとらえ方

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こうした限られた条件の中で100万件のカード登録を達成したことから、注目度の高さがうかがえる。 セキュリティの高さは実際の生活上ありがたい。Apple Payは旧来のプラスティック製の磁気カードからNFCを使った非接触ICへと切り替え、例えば1分かかっていたクレジットカードのトランザクションを5秒程度に済ませるという、大きな利便性をアピールしている。

確かにスピードも魅力的だが、それ以上にセキュリティ面が大きいと感じている。クレジットカードは米国の生活では便利で欠かせないものとなっている反面、不正利用を早期に発見するため、毎日のようにウェブやアプリで明細をチェックする必要がある。筆者も、実際の店頭で(駐車場だった)、あるいはオンラインのサイトでの利用をきっかけにした不正利用の被害に遭っている。

もちろん、クレジットカードをストップし、不正利用分は補償されるが、新しいカードが送られてくるまでの10日間前後はカードが使えず、不便を強いられる。クレジットカードリーダーが目の前にないお店や、ちょっと不安なレストランなどではなるべくカードを手渡さないようにする必要がある。

便利なクレジットカードは一方で緊張感を持った対応が日々、必要だ。Apple Payはこうしたストレスを軽減しようとしている。一度iPhoneにクレジットカードを登録すると、決済ごとに一時的な番号を使って決済を行う仕組みになっている。そのため、店員にカード本体を渡すことなく、つまり番号や名前を知られることなく、決済できる。アップルが説明するApple Payの特徴である「簡単」「セキュア」という部分は、消費者にとって、非常に大きな訴求材料となるのだ。

大手小売りチェーンが反発

アップルはApple Payについて「簡単」「セキュア」の他に「プライベート」というキーワードで紹介している。最後の「プライベート」という部分についても、消費者にとってはセキュアに並んで嬉しい仕様だ。アップル自身も、Apple Payでの購買のデータを持たないと説明している。

消費者にとってスマートで安心できる電子決済の仕組みとして登場したApple Payだが、小売チェーンからは、必ずしも歓迎されていない。「プライベート」という部分が引っかかるようだ。

Apple Payは、米国で有力な小売りチェーンの一部で、採用を見送ったり、利用をブロックしたりする動きが出ている。例えば、オンラインでのApple Payには対応するスターバックスも、店頭でのApple Payには非対応だ。またウォルマート、Kマート、セブンイレブン、ベストバイといった店舗数の多いチェーン店も、採用を見送っている。

このうち、米国でコンビニ+酒屋のような役割を果たしているドラッグストアチェーンのCVS/PharmacyとRite Aidが、Apple PayをはじめとするNFCを利用した決済をブロックした。筆者のアパートのすぐ近くにもCVSがあり、最近NFCに対応する決済端末が設置されたが、使えない状態が続いている。

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