法人税率引き下げは税体系全体で考えよ
法人減税と消費増税の関係
法人税の基本税率を5%引き下げても、問題はその先だ。実効税率は約35%にとどまり、国際比較ではなお高いからだ。国税の法人税だけをこれ以上減税するのも、バランスを欠くだろう。
そこで浮上してくるのが、地方税の法人住民税と法人事業税(法人2税)の減税である。10年度に法人住民税は2兆円強、法人事業税は3兆円弱(地方法人特別税を含む)の税収を見込んでいる。ただ、法人2税は景気に連動して税収が変動しやすいうえ、地域によって税収格差が大きいのが特徴だ。
地方の税財政に詳しい白鴎大学の浅羽隆史教授は、「法人の所得を根源とする地方税は、税収の変動や偏在性が大きく、地方税として望ましくない。地方財政を安定化させるため、最終的にはこれらの税金をなくし、代わりに地方消費税を拡充すべきだ」と指摘する。もし、法人税の基本税率を30%から25%に下げた後、第2段階として法人2税をなくしてしまえば、実効税率も25%に下がり、日本を除くアジア太平洋諸国の平均とほとんど同じになる。
とはいえ、地方税の法人2税を廃止すれば、ただでさえ苦しい地方財政はさらに苦しくなる。その“穴”を埋めるのが、税収の安定した消費税というわけだ。
消費税は現在、5%の税率のうち1%分が地方消費税として地方に回っている。税収は1%で2・5兆円弱(10年度見込み)。仮に将来、消費税率を10%に引き上げるなら、5%の引き上げ分のうち、2%を地方消費税にすれば、法人2税(約5兆円)を廃止してもカバーできる計算だ。増大が続く社会保障費との関連から消費税増税の必要性が叫ばれているが、消費税は法人税の減税ともリンクするのである。