法人税率引き下げは税体系全体で考えよ

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 先の調査では、「海外に事業拠点を設置する場合、どの税制が立地に影響するか」との問いに対し、36カ国全体では「5年間の課税免除」が1位、「法人税率が低い」が2位だった。海外進出に際しては、中堅企業でも税金が高いか安いかが大きな関心事であり、法人税などの税金の高さは海外進出の大きなネックになることがうかがえる。

財務省主税局出身の森信茂樹・中央大学法科大学院教授は、「現状の実効税率のままでは、日本企業もタックスプランニングのために海外進出が加速するだろうし、海外企業は日本に進出してこなくなる。来年度の税制改正で、まず法人税率を5%程度下げるべきだ」と言う。

法人税の基本税率30%を下げる際には、中小企業の一部に適用されている18%の軽減税率も連動して下げるべきだ。軽減税率の引き下げ(18%→11%)は、民主党のマニフェストにも書かれている。

ただ、基本税率30%を5%引き下げると約1兆円の税収減になる。バブル時代の1989年に約19兆円あった法人税収は、その後の税率引き下げや企業の業績悪化で2010年度には6兆円弱まで落ち込む。厳しい財政事情の中で、単純に税率を下げるだけの選択は難しいだろう。

であれば、やはり税金を優遇する租税特別措置の廃止・縮小や減価償却制度の見直しなどによる課税ベースの拡大を同時に行うべきだ。

法人税に関する租特は約70あり、減税額は10年度で1兆円弱。すべて廃止すれば、基本税率5%下げに伴う減収額をほぼ埋められるが、景気への配慮などから廃止・縮小には慎重論も強い。森信教授は、租特よりも減価償却制度の見直しを主張する。「特に加速度償却(250%償却)は見直すべきだ。そうして課税ベースを広げれば、税率を下げてもいずれ税収は回復する」。現行の減価償却(定率法)の基本である250%償却は、償却のスピードが速くて利益を圧迫しすぎるため、企業からも現状に合わないとの声が出ている。

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