法人税率引き下げは税体系全体で考えよ
秋から年末にかけて本格化する来年度の税制改正作業では、法人税の減税が焦点になりそうだ。日本経済団体連合会が「少なくとも5%」の税率引き下げを要求しているのをはじめ、産業界からは減税要求の大合唱が続く。
日本の法人税の実効税率は、国際的にみて突出して高い。法人税の実効税率引き下げが、緊急の課題であることは確かだ。
ただ、厳しい財政事情や税体系全体における整合性を考えれば、単に法人税率を引き下げるだけでは、さまざまな歪みをもたらす。
5%下げで1兆円減収
日本の法人税の実効税率は、40・69%(東京都の場合)となっている。国税である法人税の基本税率は30%だが、これに地方税の法人住民税と法人事業税(同時に徴収する地方法人特別税を含む)を加味して計算した数字が40・69%だ。この水準は、世界の主要国では米国と並んで最も高い。ちなみに、米国は40・8%(カリフォルニア州の場合)、EU諸国は平均で26・6%、日本を除くアジア太平洋諸国は平均で25・4%となっている。
ここに、気になる調査結果がある。国際会計事務所大手のグラント・ソントンが世界36カ国の中堅企業を対象に行った意識調査によると、「経営者の視点から自国で最大の負担と思われる税は何か」との質問に対し、「法人税」と答えた割合が日本では45・6%に上り、国別で最高だった。ところが、日本とともに実効税率の高い米国では、「法人税」との回答割合が30%にすぎない。米国企業の場合、各種の税制優遇措置に加え、中堅企業でもいわゆる「タックスプランニング」を実行しているケースが多いとみられるためだ。
法人税率の低い国に拠点を設け利益を集中させれば、本国の税率が高くても、グループでの税負担は軽くなる。米国の大企業では、マイクロソフトやコカ・コーラといった多国籍企業がタックスプランニングを推進しているのは有名な話だ。