SDGsとGDPは両立できる?の問いがズレている訳 オードリー・タンが語る「169分の1」

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〈GDP〉は国内総生産を表す指標としてこれからも使い続けられていくでしょうが、社会には人が幸せであるかどうかとか、〈GDP〉以外にもっと重要なことがありますよね。

それらの指標はたとえば、きれいな水が飲めていること、よい教育を受けていること、自分の能力を発揮できていることなどの項目によって構成されているのかもしれません。測るものによって、指標やその測り方は異なりますよね。

私にとっての指標とは、「共通の価値観」のように、皆で一緒に創り出すものです。

私個人が特定の議題を大事だと思うかどうかは重要ではなく、皆が討論を重ねる中で、「社会が『これが大事だ』と思える共通の価値観を見出していくこと」です。

〈SDGs〉は世界共通の価値観

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もし私が「これは大事なテーマだ」と思ったとしても、社会がそれを大して重要だと思わないのであれば、それはおそらく私自身の問題です。その場合、私はまず先に自分が重要だと思っているテーマを同じように重要だと思っている人々を探し出すべきですね。そして、そのコミュニティの中で、そのテーマの重要性や、伝え方について討論していくことが大切です。

「皆がこのテーマを重要だと思っていなくても、私が重要だと思うから、皆にやれと命令する」ということでは、まったく意味がありません。

「共通の価値観」の形成には、これまでもプラットフォーム〈Join〉や、AIによる合意形成アルゴリズムシステム〈Pol. is〉などを利用してきましたし、最近では若者間での討論会〈Let’s Talk〉で心理カウンセリングや遠隔心理医療について話し合っています。そして、こうした話し合いで出された結論は、現役の専門家たちにどう思うのかを聞いてみるようにしています。そこでさらに「共通の価値観」を見出すことができれば、次は「何か一緒にできることはないか?」といったように、対話を重ねていくことができますからね。

そうした意味で、〈SDGs〉は世界共通の価値観だといえます。

「共通の価値観」を見出し、それをより多くの人々に伝えたいと思った時、私はよく「ソーシャルイノベーション」を用いることをおすすめしています。

本来であればそのテーマについて討論するはずもなかった人々が「ソーシャルイノベーション」によって新たにつながることができるからです。
たとえば私が今着ているジャケットは、回収したデニム生地をアップサイクルすべく、デザイナーが現代にフィットするデザインを考え、出産や介護などさまざまな理由で仕事から離れていた地元女性たちに裁縫を依頼して作られたものです。

そこに「ソーシャルイノベーション」があったからこそ、もともと一緒に仕事をしているわけではなかった人々が「共通の価値観」を見出し、ともに能力を発揮することができています。

これまでの考え方の延長線上で〈SDGs〉の17のゴールを同時に達成しようとすると、難易度が高いと感じるかもしれません。ですがそこに「ソーシャルイノベーション」の概念が浸透するだけで、〈SDGs〉という世界共通の価値観を実現する可能性を無限に広げることができるのです。

近藤 弥生子 ノンフィクションライター

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こんどう やえこ / Yaeko Kondo

2011年より台湾・台北在住。オードリー・タンからカルチャー界隈まで、生活者目線で取材し続ける。東京の出版社で雑誌編集を経たのち、駐在員との結婚をきっかけに台湾移住。現地デジタルマーケティング企業で勤務後、独立して日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を設立。台湾での妊娠出産、離婚・シングルマザーを経て、台湾人と再婚。著書に『オードリー・タンの思考』『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』がある。

ブログ:「心跳台灣」

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