グーグルの爆発的成長を支えた超シンプルな秘密 個の力を引き出しながら組織も一枚岩になる
OKRでは「背伸びした目標に挑戦したか」を重視し、達成可能性が五分五分の目標が求められる。1.0を達成したら「それってKRの目標数値が低すぎ」という話になる。たとえば1.0を達成したイケダさんは、次の四半期のKRは「毎日7キロ歩く」に変更することを検討すべきだ。
OKRはアンディ・グローブがインテル社長時代に開発したものだが、OKRが達成度1.0にこだわらないのはグローブ独特の考えによるものだ。
グローブは「自己実現の欲求」を提唱した著者マズロー(前回記事マズローの連載へのリンク)に心酔していた。グローブはつねに自分の能力ギリギリの限界に挑戦して、ベストの結果を出す人がいることに興味をもっていたが、一方で普通の人々はなかなかそんなことをやろうとしないことも理解していた。そこで普通の人々から最大の成果を引き出すには「背伸びした目標が有効」と考えたのだ。
この「一見不可能な目標に挑戦すべし」というグローブの考えは、グーグルのラリー・ペイジに継承され、その後のグーグルの爆発的成長を生み出した。
KRを検証する目的は「結果を検証し、どう改善するか」を学ぶこと。だから人事評価とは切り離されている。目標が報酬を決める基準になると、社員は守りに入り実力を超えるリスクに挑戦しなくなる。だからOKRでは人事評価は別途行うのだ。
OKRは「PDCAの弱点克服」のために生まれた
OKRは一見PDCAプロセス(計画:Plan →実行:Do →検証:Check →対策:Action)に似ているが、大きく違う点がある。OKR誕生の経緯を知れば、この違いがわかる。
「インテルを偉大な企業にしたい」と考えたグローブは、OKRを生み出すために経営理論を徹底的に学んだ。出発点はドラッカーだった。
ドラッカーは「企業は個人の強みと責任感を発揮させ、ビジョンと努力の方向を一致させてチームワークを育むべきだ」として、MBO(目標による管理:Management By Objective)を提唱した。グローブはこの理念自体には賛同したが、現実にやってみると、MBOには限界があった。本社が決めた目標が末端の現場に降りるまでに恐ろしく時間がかかるのだ。さらに目標のビジョンは立派でも、末端の現場に降りる頃には魂が抜けた「売り上げ目標は対前年20%増」といった数値目標に化けてしまう。
さらにMBOは、PDCAサイクルで目標管理する。全社目標を細かく分け、社員に個人目標を与え、達成度を評価する。しかしトップダウンは指示待ち社員を生み、社員は全社目標の中で自分がいかに挑戦するかを考えなくなった。
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