グーグルの爆発的成長を支えた超シンプルな秘密 個の力を引き出しながら組織も一枚岩になる
さらに、多くの企業がMBOと給与を連動させたので、社員は「給与が下がるのは嫌だ」と失敗のリスクをとらなくなった。これでは現代では勝てない。MBOやPDCAは万能ではなかったのだ。管理過剰の弊害だ。
「既存の経営理論は、役に立たない」と知ったグローブは、よりすぐれた経営手法を編み出すべく、経営学だけでなく当時登場したばかりの行動経済学や認知心理学の文献を読みあさってOKRを生み出し、インテルで展開したのである。
著者のドーアはベンチャーキャピタリストに転身する前の1975年、インテルの若手社員としてグローブからOKRの活用法を学んだ。インテル社内では全員がお互いにどのようなOKRを設定・管理しているかを見ることができ、誰が何をしているかがすぐにわかった。さらにドーアも自分でOKR設定しているおかげで何をすべきか明確になったし、インテルでまったく新しい仕事を依頼されたときも、OKRを根拠にその仕事を受けるか断るかを即答でき、気がラクになったという。
OKRが生み出す組織文化
現代の大企業が組織文化を変革する手段としてOKRに注目しているのは、社員の潜在能力を引き出す可能性を秘めているからだ。
現場で大きな変化が起こる現代では、現場社員が自分で何をすべきかを考えて決める仕組みと、そのような行動を促す組織文化が必要だ。OKRにより、チームを最優先しつつ、現場主導で組織が連携して動く組織文化を生み出せる可能性がある。
一方でOKRを会社に導入するには、独自の組織文化や企業の個性にあわせて微妙なさじ加減が必要になる。だから導入当初は失敗することが多いという。そこでOKRは導入当初は失敗することを前提に考え、企業ごとの独自の組織文化に合わせて調整しながら実践する必要がある。いきなりOKRを全社展開せずに、まずは小規模な部門で試行するのもひとつの方法だ。試行錯誤を通して学びながら、OKRを組織に最適化していくことが必要なのだ。
日本の組織はともするとセクショナリズムに陥りがちで、個の力も抑えられがちだ。しかし労働人口が減少する日本では、個の力を最大化して組織全体の力に繋げることが急務だ。OKRはこの解決策になりうる。実際に中期経営計画で「社員活力の最大化」を掲げる花王は、2021年から人事評価制度を刷新しOKRを導入した。一方で多くのビジネスパーソンがまだOKRを知らないのも現実である。今後、日本企業活性化の一つの選択肢として、OKRも考えていくべきだろう。
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