第一三共子会社のアスビオファーマが新本社稼働、独創的な研究開発目指す

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第一三共子会社のアスビオファーマが新本社稼働、独創的な研究開発目指す

第一三共の子会社アスビオファーマは、本社機能や研究開発拠点を統合した新本社および研究所(写真)を神戸市ポートアイランド地区の「神戸医療産業都市」内にオープンさせた。拠点統合を機に研究開発体制を一新し、「ベンチャー企業らしい研究開発成果を送り出していく」(中山讓治・第一三共社長)。

第一三共は、東京・品川区および江戸川区に研究開発センターを保有する。一方、サントリーの医薬事業が前身で、同社から買収したアスビオファーマは、従来、群馬県館林および大阪府山崎に研究開発拠点を有していた。これらを神戸に移転集約するとともに、研究開発の仕組みを大幅に見直す。

従来の創薬から製品販売までをカバーする体制をやめ、研究からフェーズ2a(第2相)に相当する臨床効果確認(POC)までに守備範囲を限定。フェーズ2b以降の開発後期からは第一三共、または外部の提携先企業に委ねることで、製品化スピードをアップさせる。また、第一三共本体の研究開発スタイルとは異なり、重点疾患を設定せずに、新たに見い出した標的分子や作用機序を元に適応症を探していく。こうしたベンチャー型の取り組みにより、まったく新しいタイプの新薬開発の創出を目指す。

アスビオファーマは循環器領域に強く、これまで国産初の不整脈治療薬「サンリズム」や急性心不全治療薬「ハンプ」などを送り出してきた。ただ、第一三共傘下に入った2000年代以降は新薬開発が壁にぶつかっている。第一三共社内では、研究開発体制見直しの議論の中で、本体との統合についても検討されたもようだが、第一三共にはないベンチャー企業らしさを維持していく方針を決めた。

人材採用活動は従来から第一三共とは別に行ってきた。加えて新本社への移転を機に、マネジメント体制も一新。部、課などの階層構造を廃止し、現場のリーダーに権限を集約させた。また、従来のような製品売り上げがなくなり、第一三共からの研究開発受託収入で、会社運営の財源を賄っていく。

製薬業界では、生活習慣病を中心としたブロックバスター(年商10億ドル以上の大型薬)による成功モデルが通用しにくくなっている。その反面で、ベンチャー企業的な開発スタイルの導入や、大手企業とバイオベンチャーとの提携が相次いでいる。アスビオファーマの成否は、日系大手製薬企業にとって、研究開発スタイル見直しの試金石になる。

アスビオファーマでは、医療産業都市の他企業や大学、研究機関との交流を深めることにより、研究開発のシナジー追求も目指す、としている。

(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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