著者はFBI時代には訓練生たちに、また現在では大学生たちにショッピングモールで実習させ、見知らぬ相手から情報を聞き出す課題を与え、かならずクリアさせている。どんな人でもかならず引き出し法を身につけられるし、練習を重ねれば臨機応変に活用できるようになると著者が明言しているのは、FBI捜査官たちだけではなく、すべての教え子たちが実際に引き出し法を活用できるようになっているからだ。だから、あなたもかならず習得できると、著者は読者を励ましている。
質問らしい質問はしない
この引き出し法には数々のテクニックがあり、いずれも著者が編み出したものだが、訳者がなにより驚いたのは、ほとんど質問らしい質問をしない点だ。こちらが情報を聞き出したいと思っていることをいっさい悟られずに、ただ自然な流れで会話をするだけ。
それというのも、著者は心理学者でもあるため、どのテクニックも人間の心理が基盤になっているからだ。次から次へと質問され、根掘り葉掘り聞かれれば、当然、相手はあなたのことをうさんくさいと思う。よって博士は相手と信頼関係を築き、好感をもたせてから、さりげなく会話を始めていく。どの実例を読んでも、その見事なお手並みに舌を巻くばかりだ。
例えば以下は、本書で紹介されている「推測を述べる」テクニックと「範囲を限定する」テクニックを使って、競争入札に参加していると思われるライバル企業の入札価格を推測するためのテクニックと会話例だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら