ブラザーやコーンズが自動車産業に参入する意味 異業種からの参入が相次ぐ、自動車業界の潮流

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アイリスの詳細な説明(筆者撮影)

加えて、ルミナー・テクノロジーズの製品は、低価格化を実現することで、自動車メーカーの製造コスト低減にもつながり、より量産車への搭載がしやすいのも特徴だ。実際にアイリスは、スウェーデンのボルボ・カーズが2022年度中に発売を予定する大型SUV「XC90」への採用が決まっている。

ボルボ・カーズのフラッグシップといえるXC90の新型について、2021年6月に同社は、BEV(電気自動車)として発売することを発表している。また、新型車の開発においては、ルミナー・テクノロジーズと共同で行うことで、高度な自律走行システムなどを搭載。衝突回避技術をはじめとする次世代の安全パッケージを採用することで、死亡事故の減少を目指すことも明らかにしている。

なお、XC90に搭載予定のアイリスは、車両のルーフ部前方に装着されることが予定され、車体のフォルムを犠牲にすることなく、高い安全性も確保するという。法規などの問題があるため、どの程度の自動運転が可能なのかはまだ不明だが、将来的な完全自動運転も見据えた、より先進の安全装備になることが予想される。

以上のように、安くて高性能なのがルミナー・テクノロジーズ製品の特徴だ。コーンズテクノロジーでは、今後、国内自動車メーカーにもアイリスをはじめとする製品を提案していく予定だ。なお、同社の担当者によれば、「競合となるのは、やはり価格が安い中国製のLiDAR。だが、中国企業も技術力は高いものの、製品がどれほどの性能を持つのかは未知数」だとして、十分に商機があることをにおわせていた。

変わりつつある自動車業界の姿

ブラザー工業、コーンズといった古参の企業までが、新時代に向けてより躍進することや、生き残り戦術として異業種参入する自動車業界。コーンズテクノロジーの担当者の発言にもあったとおり、敵は国内だけでなく、海外にも列居する。

一方、今後は、既存の完成車メーカーだけでなく、例えば、ソニーやアップルといったIT企業も自動車製造に乗り出してくることから、取引先や見込める顧客は従来よりも幅広くなる可能性が十分ある。そう考えると、まだまだ先は見えないし、激しい変化はむしろこれから本格化するといえる。いずれにしろ、自動車は、われわれの暮らしにも身近な存在だけに、大きな変革期を迎えた業界のさまざまな動きには、今後も注視していきたい。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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