羽生結弦が緊急会見で怖さや言い訳を口にした訳 成功者だからこそ必要だった「9歳の自分」
たとえ間違ったことは言っていなくても、自らの影響力、大会の規模、関係者の立場などを踏まえて、自分発信でフォローの言葉を伝えようとする行為に優れたリーダーの資質を感じさせられました。
質疑応答がはじまり、「今後も4回転アクセルに挑戦し続けるのか?」と尋ねられた羽生選手は、これまでのイメージとは異なる姿を見せはじめました。
「どうなんでしょうかね……まだ自分の中でまとまってはいないです。今言えるのは、今回これを言うことが正しいのかどうかわからないですし、何か『言い訳くさくなっていろいろ言われるのも嫌だな』って。平昌オリンピックのときもそうでしたけど、『何か言ったら嫌われるだろうな』っていうか、『何かしら言われるんだろうな』って怖い気持ちもあるんですけど、でも事実なので」と競技以外のことで苦悩を語りはじめたのです。
等身大の弱さを見せた羽生結弦
羽生選手が「“いろいろ言われること”や“嫌われること”をこれほど恐れていた」と思っていた人は少ないのではないでしょうか。オリンピックを連覇した絶対的な王者がその座を明け渡してなお虚勢を張り続けるのではなく、等身大の弱さを見せることを選んだのです。
「前日の練習で足を痛めて、4回転半で捻挫しました。その捻挫も思ったよりひどくて、『普通の試合だったら完全に棄権していただろうな』って思いますし、ドクターからも『10日は安静にしていてね』と言われているんですけど、それくらい悪くて。『朝の公式練習でもあまりに痛かったので、どうしようかな』と思ったんですけど、そのあと注射を打ってもらって、6分間練習の直前10分前に出場することを決めました」とあえて詳細にわたる経緯を率直に語りました。
また、羽生選手は次の質問に対する回答の際も、「スケートのことを嫌いになることはたくさんありますし、『フィギュアスケートって何だろう』とよく思いますし、『僕自身が目指していることがフィギュアスケートなのか』とも考えます」などの不安を率直に語っていました。
これらのコメントから見えたのは未熟さではなく、本気でトップを狙っていた人だけが持ちうる悔しさ。だから羽生選手は、「でもその注射の痛みを消してもらえる感覚だったり、自分がケガをして追い込まれて、ショートプログラムも悔しくて、いろいろな思いが渦巻いた結果としてアドレナリンが凄く出て、自分の中でも『最高のアクセルができた』と思っています」と胸を張ることも忘れませんでした。
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