高速道路の「大雪対策」がここ数年で変わった訳 「できるだけ止めない」→「事前に止める」へ

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当然、事故やスリップによる立ち往生などもあって、そのときは日本と同様に大渋滞が起き、しばしばニュースで放送される。アメリカのハイウェイも徹底した融雪とオールシーズンタイヤや4WD車で冬を乗り切っていて、(地域によってももちろん違いはあるが概ね)日本ほど雪対策に頭を痛めている状況にはないように感じられる。

ここ1、2年、高速道路の雪対策でもっとも大きく変わったのは、「降雪予測に基づく事前の通行止め」の実施であろう。

躊躇せず「あらかじめ止める」時代へ

この10年ほどの間に、鉄道が台風や豪雨などで運行ができなくなり、乗客を乗せた列車が長時間駅と駅の間で立ち往生したり、運休に伴って駅や駅前のバスやタクシーの乗り場に長蛇の列ができて大混乱したことが何度となくあった。

こうした混乱を反省して、運休が生じそうな区間の運転をあらかじめとりやめる「計画運休」の導入が一定の定着を見たことを受け、高速道路でも「事前の通行止め」を行うようになったのだ。

ちなみに大都市圏の鉄道で気象災害の予測をもとに最初に計画的な大幅運休を行ったのは、2014年10月とされている。

令和元年台風第15号、JR東日本の計画運休予告(写真tarousite / PIXTA)

台風19号の接近に伴い、JR西日本が京阪神地区で前日に予告したうえで、主要路線の運転をあらかじめ止めたのだ。その後、関西の私鉄や首都圏のJR/私鉄でも実施されるようになり、おおむね利用者に理解されるようになってきている。

それまでは、本当に通行できなくなるような事態になるまで「できるだけ高速道路は止めない」というのが基本的な考え方であった。高速道路は物流の要であり、止めればその影響は該当地域だけでなく全国に及ぶ。

また、一般道は勾配や除雪体制が高速道路に比べて不利な条件であるため、一般道の走行が難しくなっても「高速道路はぎりぎりまで止めない」というのが、いわば常識であった。

しかし、そのために起こったのが、2020年12月に起こった「関越道大規模立ち往生」のような大規模な渋滞である。

このときは、関越道の塩沢石打IC付近で発生した車の立ち往生により、一気に渋滞がつながった。このときは、すでに並行する国道17号線が通行止めだったことから「高速道路を閉鎖してはいけない」という判断が働き、すぐに周辺のインターチェンジの閉鎖を行わなかったため、解消までに52時間もの時間を要したのだ。

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