内容は「今日は自分でパン作りをしてみた。そしてスーパーにトイレットペーパーを買い出しに行って……」というような他愛もないものが多いのだけれど、出版した編集者が言うには、コロナのような世界的パンデミックを記録して将来子供たちに伝えることは重要であるためこのような本を出版したそうだ。そのほかには家庭内暴力や仕事に関するバーンアウトやハラスメント、ガンなどの病気の闘病などを証言、記録した書籍などもコロナ禍では増えている。
コロナ報道写真集がクリスマスプレゼントに
くみ: 「読者より筆者のほうが多い」というのは面白いね。それだけ何か表現したり考えを持っていたりする人が多いのかな。
面白いなと思ったのは、昨年末にフランスで大手通信社がコロナの報道写真をまとめた写真集を出版して、それがニュースで取り上げられていたのだけど、ちょうどクリスマス商戦に間に合うような時期に出て、クリスマスプレゼントとしての販売も視野に入れていたようなんだよね。
クリスマスプレゼントに対する感覚がそもそも日本とかなり違っているなあと改めて感じたけど、そういう書籍を記録として家族や近しい人に送るのは、コロナという特殊な時代の記憶を維持するという意味になるのかなと感じた。
エマニュエル : そうかもしれないね。そもそも、どうしてフランスでこんなに簡単に作家になろうと考える人が多いかというと、出版システムの影響もあるのかもしれない。アングロサクソンの国なんかは、出版社と作家の中継ぎとなる「文芸エージェント」のような存在があるけれど、フランスでは作家自ら出版社に原稿を直接送る方法を取っている。
もちろん原稿が受理されて出版までたどり着く確率は低いとはいえ、出版社の数がとても多く、フランスだけでも100社以上ある上に、海外のフランス語圏(カナダ、ベルギー、スイスなど)の出版社にも送ることができる。