これはフランスの特徴といってもいいと思うのだけど、全小説での売り上げに占める海外小説の割合が40%ととても高い。これはアングロサクソンの国では見られない現象だろう。そして政治関連の書籍や実用書、児童文学なども好調なジャンルの中に入っている。
日本では今どういった傾向なの?
くみ: 日本でももちろん漫画は好調よね。それと今、好調な電子書籍を中心に売れ行きがいいものはすでに紙の書籍で出版されていたかつてのベストセラーを電子書籍化したものが多いみたい。もちろん日本でも新型コロナウィルスについてやワクチン、国の政策を含めた感染症対策など、いわゆるコロナ関連書籍はこの2年である程度新刊が出ている。でもコロナとは関係のない小説など他の分野で新たに持ち込まれる原稿が増えたかはわからない。
「読者の数よりも、筆者の数のほうが多い」
エマニュエル : 出版社に持ち込まれる原稿の数が増えたというのも、興味深い背景がある。そもそもフランスではよく「読者の数よりも、筆者の数のほうが多い」などと言われていたくらいだったけれど、コロナ禍以降はこの傾向がより顕著になったと言える。
ロックダウンやテレワークの増加により、自由に使える時間が増えたことで執筆を始めようと考える人が増えたり、以前から執筆を趣味でしていたけれど原稿を送るまでは考えていなかった人たちなども、出版を決心するに至ったことなどが原因に挙げられる。出版社によると、執筆者のプロフィールはさまざまで、会社の社長だったり、退職者、学生など年齢も幅広く、未成年も中には含まれていたという。
パリのとある大手出版社の社長が言うには、ロックダウンで劇場が長期間閉鎖されていた影響もあって、多くの役者や脚本家、歌手といった芸術分野からの原稿を数多く受け取ったそうだ。
そしてコロナ禍が始まった直後なんかは、「隔離日記」というようなロックダウン中の生活を記録した本なども、いくつか出版されていた。