
過重な基地負担と、それによって脅かされる平穏な日常生活、高まる緊張、ないがしろにされる住民の意思など種々の問題に、沖縄県知事はどういう姿勢で臨んでいるのか。玉城デニー沖縄県知事に、80年の節目となる今年の平和発信や、一部で「親中」とも指摘される地域外交などへの考えを問うた。
――沖縄戦から80年の節目にあたります。どんな取り組みをしますか。
戦後80周年の平和祈念事業を計画しており、40事業、総額9.4億円を予算計上している。歴史を振り返り、先の大戦の犠牲者の追悼と、長期的な視点に立ち、平和な未来に向けて豊かな沖縄を実現していく。
主な取り組みとして、首里城地下にある第32軍司令部壕の保存・公開や、沖縄県平和祈念資料館の展示更新などの基盤整備。「平和の礎」に刻銘されている方々のインターネット公開、仮想空間メタバースを活用した平和事業、国連関係者を招聘したシンポジウムによる平和発信を予定している。
――平和祈念資料館の展示更新監修委員会の委員からは、昨年3回委員会が開かれたが今年はまだ開かれておらず、取り組みが遅れているのではとの懸念の声を聞きました。
事業を進める上でとくに問題点があるわけではないと思う。委員の方にどういう方向性でどのようなスケジュール感で話を進めるかを県庁内で整えてから委員会に諮ろうということではないか。
20年以上リニューアルできなかったことを鑑みて、2000年以降の世界の情勢、国内の動き、アジアやロシア・ウクライナなど激動の国際情勢を平和祈念資料館で扱い、沖縄県として平和発信、学習につなげていきたい。
平和発信では、とくに若い世代や子どもたちが平和に向けて沖縄戦の体験などを次世代へ継承する取り組みも実施する。
沖縄戦「継承されていない」が7割
――戦後80年の節目ですが、日本本土をはじめ関心がものすごく高いわけでもありません。
戦争に対する関心、沖縄戦の記憶の風化が著しくなっているのは懸念せざるを得ない。2022年のあるシンクタンクの全国調査によれば、沖縄戦の歴史がどの程度継承されているかという質問に、7割が「継承されていない」と答えている。それに対して、沖縄戦の歴史を知りたいかとの問いに、「知りたい」「ある程度知りたい」は8割を占める。
長らく修学旅行などで平和を学ぶ機会を作ってもらっている。沖縄戦への関心や学ぶ機会を作り続けることが重要だろう。県外でのシンポジウム、ワークショップ、修学旅行の事前学習など沖縄県の実相や教訓を継承する取り組みを充実させたい。
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