NPT体制に大きな亀裂 世界に核を広げる危険性

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


 イスラエルは中東世界で唯一の核兵器保有国である。68年に調印され、70年に発効したNPT体制では、米国、ロシア(当時はソ連)、イギリス、フランス、中国の5カ国(いずれも国連安保理常任理事国)以外の核兵器保有を禁止している。それ以外のNPT加盟国はIAEAの監視下で核の平和利用をする権利を持つだけ。イランもその国の一つだ。

一方でイスラエルはNPTに加盟していない。

NPT体制成立直前に核兵器保有に成功したのがイスラエルだ。世の中には公然の秘密がある。その一つがイスラエルの核兵器保有である。

イスラエル政府は核兵器保有を認めていない。写真はイスラエルの核兵器保有を告発したイスラエル人元核技術者のモルデハイ・バヌヌ氏(モロッコ出身のユダヤ人)だ。

バヌヌ氏は86年に、英サンデー・タイムズ紙に、詳細な資料に基づきイスラエルの核兵器保有を伝えた。このためバヌヌ氏は国家反逆罪で裁判にかけられ、04年まで18年も服役した。その後も国外旅行などを禁止されている。イスラエルの核兵器が、敵対するアラブ諸国などへの抑止力であるならば、核兵器保有を認めることはかえって抑止力になるはずだ。バヌヌ氏投獄に見られるように、イスラエルがかたくなにその存在を認めないのはなぜか。

以下は筆者の憶測になるが、60年代にイスラエルの核開発を原子力発電所建設などを通して直接支援したのが、当時イスラエルと友好関係にあったフランスといわれている。米国も間接的に支援したといわれる。この時期は米国、フランスともNPT体制の創出を進めた時期だ。両国は核拡散防止に努めながら、同時にイスラエルの核兵器保有を支援したことになる。このダブルスタンダードを認めることは国際的な配慮からまだできないのだろう。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事