NPT体制に大きな亀裂 世界に核を広げる危険性

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 将来、イランが核兵器を保有すれば、中東世界でのイスラエルの核兵器独占が崩れ、イスラエルは生存が脅威にさらされる。

現状ではイスラエルは核兵器を保有したイランと共存するつもりはない。ただ、思考、行動がつねに柔軟なユダヤ人国家・イスラエルのことだから、イランの核兵器保有を阻止できないとなれば、その現実を追認する可能性はある。

ただ、ここで違う視点から、イランの核兵器保有のインパクトを考えてみよう。イラン人の大多数はインド・ヨーロッパ語族に属しており、シーア派イスラム教を信仰している。すなわちアラブ世界、スンニ派イスラム教とは鋭い対立がある。

「イランが核兵器を持てば、近隣のアラブ国家、サウジアラビアやUAEに核兵器を持つ動機を与える」(関係者)。イランの核兵器はアラブ世界にとっても「悪夢」かもしれない。それだけではなく、NPT体制に大きな亀裂をもたらす。

60年代のイスラエルは今とは比較にならない貧しい国だったが、核兵器を持てた。核兵器を持つインドやパキスタン、北朝鮮も同様である。核兵器は「貧者」にとって、コストパフォーマンスの高い兵器である。

こう考えると、イランの核兵器保有は国際社会の秩序を根本から変える影響力を持っている。

(シニアライター:内田通夫 =週刊東洋経済2010年10月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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