香港市民の反抗、中国共産党の困惑 英国統治下との明確な違い

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逆に中国共産党指導部からすれば、香港人の民主化要求は、西洋の政治を模倣したがっているように見える。または、英帝国主義を懐かしがるノスタルジアだとも思える。いずれにせよ、デモ参加者たちの主張は「反中国的」だと映る。

中国指導部に言わせれば、厳格な管理と共産党の絶対的支配権があってこそ、豊かで力強い中国が台頭する環境を整えられる。民主制は無秩序につながり、思想の自由は国民に「混乱」を引き起こし、共産党批判は権威の弱体化につながる。

中国共産党は法律を超越

現在、中国共産党は、法律を超越した存在となっている。そのため汚職が蔓延している。独立した司法機関の不在が、法の支配をむしばんでいる。

17年前、一部の楽観主義者は、香港に刺激されて中国全体で改革が促進されると考えた。香港の清廉な官僚機構と独立性の高い裁判官が手本となって、中国全体に法の支配が行き渡ると期待した。しかし一方で、香港は危険なトロイの木馬となり、共産主義秩序を侵食するのではないか、と危惧する人々もいた。

今のところ、香港のセントラル地区で抗議の声を上げている人たちが、北京の政府を弱体化させようとか、ましてや転覆させる意図を持っているという証拠はどこにもない。彼らは香港において自らの権利を守ろうと、やっとの思いで立ち上がったにすぎず、抗議活動が成功する可能性は低そうだ。中国の習近平国家主席は、断固とした姿勢を示そうと躍起になっている。譲歩は弱さの証しとなりかねない。主席が目指すのは、香港の中国化であって、その逆ではない。

私が考えるところ、香港が主席の意図と逆のコースをたどった場合、中国は大きな利益を得ることになる。これには十分な根拠がある。幹部の汚職が減り、法の信頼性が高まり、思想の自由度が高まれば、中国はもっと安定した、もっと創造的で、もっと豊かな社会へと変貌する可能性が開ける。

短期的には、このシナリオが実現する可能性は低い。しかし真に「中国を愛する」人々は、北京政府の内部でなく、香港の街中にいる可能性のほうが高い。

週刊東洋経済2014年10月18日号

イアン・ブルマ 米バード大学教授、ジャーナリスト

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Ian Buruma

1951年オランダ生まれ。1970~1975年にライデン大学で中国文学を、1975~1977年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

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