そのほか、脳卒中や心筋梗塞などは、今もし発症して救急搬送となっても、オミクロン株対応で一般病床は減少している。健診等によって自分の血液検査値を定期的に把握し、適切な指導の下で服薬や食事改善等に取り組んで、予防に努めることが重要だ。
生活習慣病関連の健診・治療をおろそかにした影響は、じわじわ表れてくる。今後も数年間、さまざまな生活習慣病の罹患率と死亡率が増加する可能性がある。
「コロナうつ」の裏にある経済不安と孤独
身体的な健康問題に加え、私が危機感を持っているのは③「こころ」の健康問題だ。「コロナうつ」などとも呼ばれ、世界的に問題になっている。
OECDの報告によれば、2020年の不安神経症およびうつ病の有病率は、各国で新型コロナ流行前の2~3倍もしくはそれ以上となっている。若者、一人暮らしの人、社会・経済的地位の低い人、失業中の人は、メンタルへの打撃が高かった。
例えばアメリカでは、2万人を対象にした調査研究の結果、メンタルの不調は20歳前後の若者で最も深刻だった。
2021年5月の時点で、18~24歳の42%に中等症以上のうつ症状が認められた。以下、25~44歳では32%、45~64歳は20%と続き、65歳以上は10%にとどまった。この順位は2020年6月からの全調査期間で入れ替わっていない。
同じ研究チームは2020年に、18~24歳の若者のべ約9000人を対象に、メンタルヘルスについて調査を行っている。そこでは、新型コロナによって経済的なダメージに直面した若者が特にハイリスクなことが、強く示唆された。
経済ダメージのうち最もメンタルに悪影響だったのが、住居からの立ち退きや家賃の不払いなど「住まいの不安定性」で、中等症のうつ病が6割に上った。次いで悪影響だったのが、解雇や賃金カットなど「収入の不安定」で、同じく中等症のうつ病は5割に達した。
「在宅勤務」や「学校閉鎖」は、新型コロナが若者の生活にもたらした最大の変化だったが、メンタルへの影響はいずれも顕著ではなかった。
また、『Nature』に発表されたカナダの調査では、「孤独感」の関与が注目された。
中高年3万7000人において、新型コロナ流行の前後でうつ症状が全体として2倍になった。とりわけコロナ禍以前から「孤独」を感じていた人は、そうでない人に比べ、うつ症状が6.75倍見られた。
さらに、約2万人の分析結果からは、「孤独」を感じている人はコロナ禍においてうつ症状が深刻化しやすい傾向も示唆された。
さて、このコロナ禍で、日本人の「こころ」にも異変が起きている。引き続き「コロナうつ」について、自殺者数の気がかりな動向と併せて検証し、ポスト・コロナの医療を考えたい。
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