AMGの電動車「EQS53」乗ってわかった破格の実力 走りは強烈かつ滑らか、ただし情緒はいま一歩

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縦スリット入りのフロントグリル、ディフューザー形状とされたリアバンパー、そしてトランクリッドスポイラーなどを装着した外観は、非常に大胆な仕上がりとされている。もともとのEQSのフォルムが先鋭的なので、こうした付加アイテムが一層しっくり来ているという印象。しかも、全長5216mmもあるだけに非常に存在感がある。

インテリアは大型液晶ディスプレイの表示が専用のものに改められている。ややガジェット感が強く感じられるが、そもそもAMGモデルは小さなスイッチにまでTFTを内蔵してグラフィック表示をさせたりしているから、マッチングは悪くない。

目をひいたのは標準ではダッシュボード上面やシート表皮に、レザーではなく合成皮革のARTICOを使っていることである。BEVと言えば環境付加の小ささが売りというメソッドからすれば、本革を使わないこの方向、納得と言える。

きわめてスムーズに、そして加速は強烈

さて、では肝心な走りはどうか。発進する前に思い出していたのは、この言葉である。

「AMGのようなハイパフォーマンスブランドにとって電動化は脅威ではなくチャンスです。何しろ瞬時に大きなパワーが得られますから。でも心配されているのはブランドのDNAの部分ですよね? それについて言えば、私たちはここ数年ドライビングダイナミクスの進化に大きな努力を費やして、それこそ目をつぶっていてもAMGとわかるクルマを目指してきました。ですから何も心配はしていませんよ」

これはIAAで行ったインタビューでの、メルセデスAMGのヨッヘン・ヘルマンCTO(Chief Technical Officer)の言葉である。BEVには当然、エンジンの鼓動はなく、サウンドも聞こえてこない。メルセデスAMGと言えば、まさに高出力エンジンで名を馳せたブランドである。それだけに、電動化の時代にどのようにブランドを立てていくのかと問うた時の答えが、これだった。

アクセルペダルをじわりと踏み込んで行くと、メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+はきわめてスムーズに走り出した。前述のとおり車重は相当重いのに、豊かなトルクのおかげで転がり出しに抵抗感は無い。むしろ、質量のある物体が滑らかに動き出す様が、とても上質に感じられる。

加速は強烈の一言だ。100km/h到達まで3.4秒という数字も凄いのだが、この大きさ、重さのものが一気に速度を高めていくと、迫力が倍加される。前が開けていたとしても、容易にはアクセルを踏み切ることができない。

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