国民に「愛される」岸田首相が市場に嫌われるワケ 本気で賃金を上げたいのなら何が必要なのか?

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そのために必要なのは労働移動である。現在は資金繰り支援や雇用調整助成金といった形で、政府は苦しい企業を助けている。その結果が、コロナ下にもかかわらず2.8%(昨年11月)という低い完全失業率だ。しかるに政府の支援を受けている会社が、賃上げしてくれるとは考えにくい。

コロナ禍も3年目を迎えている。まだまだ対策が必要な分野もあるだろうが、本気でこの国の賃金を上げたいのなら、どこかで見切りをつけるべきではないのか。産業構造の新陳代謝を進めて、働き手にはもっと見込みのある会社に移動してもらうほうがいい。救済すべきは企業よりも個人であるべきだ。あるいはリカレント教育などを通して、労働力の底上げを目指すべきであろう。

岸田さんに伝えたい「2つのこと」

と、ここまで書いたところで、「こんなことを書くと嫌われるだろうなあ」と思い当たった。「かんべえ(筆者)は新自由主義者だ」などと言われるんだろうなあ。山崎氏が前出のコラムで書いていた通り、「新自由主義という言葉を使う人の議論はほとんどが的外れ」だとワシも思うけど。

およそ日本社会においては、デービッド・アトキンソン氏のように歯に衣を着せぬ人はだいたいが嫌われる。ことによると岸田さんは、マーケットで嫌われているからこそ、国民的な人気が高いのかもしれない。

おそらく国民にとってもマーケットにとっても、理想の首相とは岸田さんのようなコミュニケーションスタイルで、菅さんのような内政と安倍さんのような外交をやってくれる人ということになるだろう。他方、岸田さんの身になってみれば、前任者たちとの差別化も必要であるからこそ、新機軸を出そうと努めているのかもしれない。

岸田さんも、見かけ通りの「ミスター・ナイスガイ」ではあるまい。もし本稿をお読みになった場合には、ぜひ2つのことをお伝えしたい。ひとつは政権を長期安定的なものにするためには、世論調査の支持率と同様に株価もある程度は重要であるということ。そしてもうひとつは、「神主さんの祝詞を、真面目に聞いている人はいない」ということである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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