国民に「愛される」岸田首相が市場に嫌われるワケ 本気で賃金を上げたいのなら何が必要なのか?

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「新しい資本主義」とか「成長と分配の好循環」といったお題目は、いわば祝詞(のりと)のようなものと受け止めればいいのではないか。先週は当欄で、山崎元氏が「岸田首相は『資本主義の本質』をわかっていない」と厳しめに書いていたけれども 、「岸田さんは神主さん」と考えれば、さほど腹も立たないというものだ。

資本主義は時代の要請に合わせて勝手に変化する

私見を述べさせていただくならば、資本主義とは誰かが考案した思想体系、いわば「イズム」ではない。だから時代にあわせて「株主重視型」になったり、「公益重視型」になったりする。融通無碍に変化して、今日までしぶとく生き残ってきた。逆に社会主義のような人の思考による「イズム」は、環境変化に追いつくことができず、ことごとく失敗に終わってきたというのが過去の歴史が教えるところである。

ゆえに「新しくなければ資本主義ではない」。誰かがことさらに「新しい資本主義」などと定義するまでもなく、時代の要請に合わせて勝手に変化していくのが資本主義というものなのではないだろうか。

実際にコロナ下からアフターコロナに向けて、われわれを取り巻く環境は大きく変わっていくだろう。とりあえず、目の前で始まっているのは世界的なインフレである。そのことがアメリカの金融政策を大転換させ、世界の金融市場を揺さぶり、投資環境を大きく変えようとしている。長らく低金利と低物価が続いてきた日本経済も、否応なく大きな渦に巻き込まれていくだろう。ちょうどオミクロン株がそうであったように、「日本だけは無事」とはならないはずである。

インフレがほぼ確実に押し寄せてくる中にあって、日本経済に必要なことはデフレマインドを払拭し、「物価と共に賃金も上がる」体質に転換していくことであろう。今や「賃上げは正義」であると言っても過言ではない。

そして岸田内閣は「賃金を上げる」と言っている。ただし本気で正義を目指すならば、「賃上げ税制」といった小手先のやり方や、経団連に「お願い」するだけでは足りない。マーケットの論理から言えば、賃上げとは政府にお願いするものではない。市場メカニズムによって、労働者が経営者から勝ち取るものであるべきだ。

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