国民に「愛される」岸田首相が市場に嫌われるワケ 本気で賃金を上げたいのなら何が必要なのか?

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ところが岸田内閣は不思議な安定感を示している。今週は通常国会が始まったが、国会論戦は空回り気味だ。立民の泉健太代表は、首相の答弁姿勢を「つかみどころのないタコのような逃れ方」と評している。

裏を返せば、いかに追及が不発に終わったかということで、野党として最大限の賛辞と言っていいのではないか。「早稲田出身の首相は短命」「メガネをかけた総理は長続きしない」などと、発足当初は不吉なジンクスが囁かれていた岸田首相だが、このまま夏の参院選を乗り切れば、堂々の長期政権への道が見えてきた。

市場の評価はサッパリ、何を目指すかも「謎」

ところがこの岸田さんは、マーケットにおける評価はサッパリである。以前の安倍・菅政権は基本的に「プロ・ビジネス」路線であったし、何より株価を気にかけてくれていた。その点、岸田首相は株式市場が嫌がるようなアイデアを次々に口にするのである。

最初は「金融所得課税」だった。現在はひっこめているものの、参院選が終われば年末の税制改正で再浮上してくるだろう。昨年12月には「自社(自己)株買いの制限」に言及して、日経平均株価が300円下がる局面もあった。

年明けには「四半期決算の見直し」にも言及している。短期的な利益を追求する企業の姿勢を変えたいとのこと。英仏などは実際に四半期開示を廃止したけれども、今も主要企業は任意で情報を開示している。そりゃあそうだろう。「あそこは情報開示に消極的だ」と投資家に思われたら、途端に株は売られてしまう。この辺の理屈が、あまりわかっておられない様子である。

「新しい資本主義」というスローガンも、1月17日の施政方針演説の中であらためて説明しているが、何を目指しているのかよくわからない。その一方で、成長戦略の具体策として出てくるのは、「デジタル」「5G」「マイナンバーカード」「経済安全保障」など、あいかわらずの項目ばかりなのである。

考えてみれば、岸田さんは安倍内閣の後半3年間の政調会長であったし、その時代に事務局長として支えていたのが木原誠二現官房副長官であった。このコンビから、まるっきり違うアイデアが出てくるようなら、それこそ驚きといえよう。つまり政策の中身は変わっていないのだ。

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