産業天気図(精密機器) デジカメ牽引し各社好調、事務機もカラー機が本格化

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精密業界最大のトピックスは、デジタルカメラの普及が急速に進んでいることだろう。2002年の出荷台数で従来の銀塩カメラを抜き、2003年の出荷は前年比6割増の約4000万台が見込まれている。日本での普及が先行しているが、デジタル化が本格化した欧米市場での成長も始まっており、ここ数年は成長を持続できそうだ。普及版のコンパクト機のほか、一眼レフの製品群もこの秋から揃ってきており、競争は厳しくなっている。銀塩カメラの落ち込みは続くとみられるが、リストラや海外市場での取り組みいかんによって、各社の落ち込み度合いにはかなり差が出てきている。またデジカメやカメラ付き携帯の市場拡大によって、小型液晶などの電子デバイス、レンズ、シャッター等の増産が続いているのも明るい材料だ。
 複写機、プリンタなどの事務機器では、モノクロ機の落ち込みをカラー機、複合機でカバーする状況が続きそう。好採算の消耗品で稼ぐ構造に変わりはなく、より高付加価値のカラー化の進展は収益的にはプラスだ。一般消費者向けのインクジェットプリンタではファクシミリ、コピー、スキャナ等を一緒にした複合機、そしてデジカメの普及を背景にした写真プリントを訴求、年末商戦に向け盛り上がりをみせそうだ。
 絶好調の筆頭はキヤノン。デジカメのラインナップ、生産体制で他の追随を許さない。新製品の開発スピードが早い。複写機、プリンタの高付加価値品が伸びているのはリコーも同じである。10月にグループ統合完了のコニカミノルタもカラー機、オプトデバイスを強化中だが、当面は合併費用がかさむ。またカシオ計算機は薄型デジカメ「エクシリム」の大ヒットに、デジカメ、携帯電話向け小型液晶の成長が収益を押し上げている。6月に新規上場したセイコーエプソンは、インクジェットプリンタが海外で価格競争のあおりで厳しいものの、電子デバイスが好調だ。
 富士写真フイルムはフィルムの後退をデジカメ、デバイス、さらに子会社・富士ゼロックスの事務機で埋める格好。デジカメのほか内視鏡が収益源のオリンパス、ニコンなど海外売上比率の高い会社が多いのもこの業界の特徴である。下期以降の業績を考えるうえで、円高は懸念材料の一つとなるだろう。また成長商材のデジカメも、新製品次第で大きくシェアが変動し、価格競争も厳しくなっている。フルラインで行くのか、得意のジャンルだけに絞り込むのか、戦略が重要になってくる。またデバイス関係ではタムロン、HOYA、シチズン電子、日本電産コパルなどが増産効果を享受している。
【高橋志津子記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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