性感染症「梅毒」がコロナ禍の日本で広がるなぜ 約1.4倍増の実態から見えてくること
近年、梅毒が増えた背景として、SNSなどの利用により気軽に性行為が行われるようになったことや、性行為の多様化が進んだことなどが挙げられているが、意外なことに、梅毒以外の性感染症(淋病や性器クラミジア感染症、エイズなど)は増えていない。
「それよりもむしろ、こうしてメディアに”梅毒が増えた”という情報が流れ、注目されるようになったことで、感染に不安を覚えた男女が積極的に医療機関を受診するようになったり、医師が関心を示すようになったりして、梅毒診断の機会が増えたのではないかと推測しています」(北村さん)
梅毒は、保健所への届け出が義務づけられている「感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」の「五類感染症」に該当する。風疹や麻疹(はしか)などと同じ扱いだ。そのため、医師は症状から梅毒が疑われ、かつPCR検査などで陽性になった患者を診た場合、7日以内に保健所に届け出なければならないことになっている。
見方を変えると、感染していても検査を受けていないケースや、保健所への届け出の義務を怠っているケースも考えられる。北村さんは「届け出がある数は氷山の一角。水面下に梅毒にかかっている人が相当数いると考えられる」と危惧する。
梅毒の症状とは
そもそも梅毒とはどのような感染症で、どんな症状が出るのだろうか。
梅毒は、梅毒トレポネーマという直径0.1~0.2マイクロメートル、長さ6~20マイクロメートルの病原菌に感染することで発症する病気だ。病名は、症状がの赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ていることに由来する。
症状は感染してからの時期によって、大きく第1期、第2期、第3期、第4期に分類される。
第1期梅毒は感染後3週間前後で現れる病態で、感染した場所(性器やくちびるなど)に堅いしこりのようなもの(硬結)ができたり、ただれたりする。
粘膜の感染が主だが、皮膚の傷口などからも菌が入り込むこともあるため、背中や乳房に感染して、硬結ができることもある。痛みなどはなく、放っておくと消えてなくなるため、この段階で梅毒の感染に気づく人はほとんどいないそうだ。
第2期梅毒の症状は、感染した3カ月前後に現れる。体内に侵入した病原菌が血液を介して全身に広がり、バラ疹というバラの花のような湿疹が全身に生じるようになる。また、髪が抜けたり、皮膚の紅斑(皮膚が赤くなった状態)や口腔咽頭粘膜斑ができたりする。倦怠感や発熱などの症状が出ることもある。多くはここで異常に気づき、医療機関を受診して、梅毒に感染していることがわかるという。
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