国立女子大で相次ぎ「工学」分野の学部新設のなぜ 今春に奈良女子で、24年度にお茶の水が設置へ

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新たに作られる人間環境工学科では、ものづくりの現場を体験することを重視。学んだ知識や多様な人と関わりから自ら課題を生み出し、やりたいことを設計するプロセスを大切にする。一方、文化情報工学科は、人文科学などの文系領域の知をデータサイエンスやAIを基盤とした工学と結びつけることで、イノベーションを生み出す人材を育てる狙いがある。

「情報科学に文系の視点を実践的に組み合わせることで、より社会に受け入れられる工学にすることができます。そこで育った学生は、これまでにないバックグラウンドを持った人材として社会で活躍できると考えています」(お茶の水女子大学)

2025年度には大学入学共通テストに「情報」が加わる。それに先駆けてデータサイエンスを学べる学部を開設することで、関心の高い学生を集めたいという意図もあるようだ。

女性に魅力ある工学部とは?

女子学生の心を掴むために各大学、履修内容には工夫を凝らす。

奈良女子大では、アメリカで女性比率の高いリベラルアーツ系のオーリン工科大学と、ハーベイ・マッド大学のカリキュラムを参考にした。

「女性の場合、メカニカルな内容よりも、人間や社会への興味を入り口にした工学に惹かれる人が多いと感じています。そのため、身体の調子をよくするためには? この社会課題を解決するには? などの視点から、工学を学ぶカリキュラムが欠かせないと考えました」(藤田教授)

また、同大では日本の教養教育で不足しているのは、学生一人ひとりの個性に対応しきれていないところだとみている。無数にある社会課題の中から、自分が解決すべき課題を見極めるために、学生一人ひとりが自分の好きなこと、やりたいことなどの「個性」を把握していることが欠かせないと考える。

工学部長に就任予定の藤田盟児教授(写真:奈良女子大学)

「50人学生がいたら、50通りのエンジニアに育つべきだと考えます。好きで取り組むからこそ、リスクや苦労を乗り越えてイノベーションを生み出すエンジニアが育つと考えています」(藤田教授)

その個性を十分に発揮させる教育としてこだわったのが「自由履修制」だ。奈良女子大の工学部には学科やコース分けがなく、基幹科目と教養科目以外の65単位以上を自由に選ぶことができる。また、カリキュラムは、創造力を育てるSTEAM教育と、ユーザーや社会の課題を見つけて実践的に探究する課題解決型演習を特に重視している。

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