米軍事専門家が懸念する日本の防衛費の「使い道」 日本が何を優先すべきかを専門家に聞いた

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侵略してきた中国艦隊を攻撃するための長距離ミサイルのほかに、アメリカの防衛計画では、日本の防衛専門家が現在提唱しているような攻撃型の攻撃兵器の優先順位は高くない。

クリングナー氏は、12型やアメリカのトマホークといった長距離巡航ミサイルを、地上発射型の弾道ミサイルや極超音速ミサイルとともに調達リストに挙げているが、これらは防衛やアクセス拒否のニーズよりも低い位置に置かれている。

「長距離攻撃は有効だと思うが、最低限のレベルで十分だと思う」とショフ氏は語る。「使う必要がないのが理想だが、ある程度独立した能力を持ち、アメリカ軍と一緒に演習できることはいいことだろう」。

「独自開発より、アメリカ製購入がベター」

日本がこの分野で努力することに反対する人もいる。ヴァン・ジャクソン氏は、こうした兵器システムは「実行不可能」で「ありえない」と考えている。というのも、長距離攻撃は、その使用に追従できる地上軍や水陸両用軍と組み合わせて初めて有効になるからだ。

しかし、多くは日本がハードの拡充を進めるだろうと考えており、しかも、航空機からミサイルのタイルまで独自の兵器システムを志向するだろうと見ている。アメリカの専門家は日本がこうした独自路線を追求することを理解しているが、日本が高くて効果の薄い兵器を作るよりも、アメリカ製を購入することを望んでいる。

日本が攻撃型攻撃能力や独自の武器を求める背景について、アメリカの防衛専門家の中には、日本がアメリカ軍の撤退を恐れ、アメリカに頼らずに日本を守る準備をしている兆候があると見る人もいる。一方、アメリカにとって日本は、アメリカの東アジア計画のための戦力増強装置であり、軍事力の代わりではなく、補完物である。

日本も、アメリカの安全保障がない世界に直面する準備ができていないというのが主な理由で同様の考えを持っている。しかし水面下には、いつの日かアメリカがそこにいなくなるのではないかという不安が埋もれており、それが今回の攻撃型攻撃の議論で露呈したのである。

「アメリカとの同盟関係を維持したまま、日本が1000億ドルもの防衛費を使うべきだとは思わない」とジャクソン氏は話す。「同盟破棄を回避する目的であれば、防衛予算を2倍にすることは理にかなっている。しかし、そうでなければ、実際に日本政府の安全性を高めることにはならないだろう」と付け加えた。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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