米軍事専門家が懸念する日本の防衛費の「使い道」 日本が何を優先すべきかを専門家に聞いた

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「ミサイル防衛については、陸上のイージス艦は必須だと思う」とショフ氏は話す。最近、北朝鮮がミサイル防衛を圧倒するような機動力のあるミサイルの発射実験を行ったことを見据え、「北朝鮮の威嚇のための安価なミサイルの発射をテーブルから外す」ことが重要だと考えている。

抑止力は依然としてアメリカの「核の傘」に依存しているが、「もし金正恩(朝鮮労働党総書記)が正気を失ったら、日本はアメリカが北朝鮮を消滅させる前に、できるだけ多くのミサイルを破壊したいと考えるだろう」とショフ氏は結論づけている。

また、MITのヘギンボッサム氏とサミュエルズ氏は、地対空ミサイルなどの弾道ミサイルや巡航ミサイルの防衛手段の拡大など、防衛システムを重視している。また、日本の空軍や海軍が初期攻撃を受けても生き残ることができる能力、つまりレジリエンスを強化することが優先されている。

基地の強化、航空機用のシェルターの建設、滑走路の修理能力の向上、空中給油タンカーの買い増し、海上での艦船の積み替え能力の向上、小型水上艦の増設、最先端の戦闘機と低価格の戦闘機の両方を追加する必要がある。

「アクセス拒否」の重要性

このような自衛策と並んで、アメリカの専門家が重要視しているのが、「アクセス拒否」と呼ばれるものだ。実際には、日米にとっては、中国の海軍や空軍が日本近海に侵入して尖閣や琉球を脅かすのを防ぎ、ロシアの北日本への潜在的な侵略を阻止できることを意味する。これらのシステムは、台湾海峡を越えた攻撃を抑止する役割も果たしたが、筆者が話した専門家の中で、台湾を具体的に挙げた人はいなかった。

アメリカの防衛専門家は、敵の領土を攻撃する武器よりも、侵略してきた軍隊を沈めたり、撃ち落としたりすることが重要だと見ている。また、日本は海底の戦いの場を支配すべきだと主張しており、強大な潜水艦の艦隊を継続的に構築し、哨戒機などの対潜水艦戦能力を追加し、人間が乗らなくても活動できる無人の水中車両を開発すべきだとしている。

日本で開発された12型のような対艦ミサイルに多額の資金を投じることに賛成している。このミサイルには、地上からの発射距離を延ばすバージョンも含まれており、F-35戦闘機用に設計された空中発射型のジョイントストライクミサイルもある。

ヘリテージ財団のクリングナー氏は、日本の新しい水陸両用・迅速展開地上部隊(アメリカ海兵隊版)の拡大と、南西諸島防衛のための空路・海路での部隊移動能力を優先すべきだとしている。F-35の空母搭載版を装備した小型空母を増やし、それらの戦力を迅速に移動させるための船やヘリコプターにも資金を投入すべきだと考えている。

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